富士通オペレーティング・システムの歴史

富士通のメインフレーム用オペレーティングシステム(Operating System,以下OSと略す)の1990年までの歴史を以下に概説する.

(1)富士通の初期の計算機のソフトウェア
富士通の初期の計算機用には,同社からソフトウェアは提供されなかった.富士通は,1963年に大型汎用コンピュータFACOM 222用ソフトウェアとして,ローダ,IOCS(Input Output Control System),FAST(FORTRANコンパイラ),アセンブラおよびSORTを初めて提供した.

(2)中型FACOM 230シリーズ用制御プログラムMCP(Master Control Program)I,II,III
汎用中型機FACOM 230-20およびFACOM 230-30用としてバッチ処理用制御プログラムMCP I,MCP IIをそれぞれ1965年,1966年に,小規模なリアルタイム処理を実現したMCP IIIを1967年に開発した.MCP IIでは,同社の中型汎用OSとして初めて多重プログラミングを実現した.

(3)大型FACOM 230シリーズ用制御プログラム MONITOR II,III,IV,V,VI,VII
富士通は,1966年に通産省のFONTACプロジェクトの成果を基に大型汎用機FACOM 230-50用OS MONITOR IIを商用化した.MONITOR IIでは,世界に先駆けてダイナミック・リロケーション方式を採用した.次いで,機能を強化したMONITOR IIIおよびMONITOR IVを1968年に開発した.
その後,大型汎用機FACOM 230-60用OSとして MONITOR V(1968年完成)およびMONITOR VI(1974年完成),超大型汎用機FACOM 230-75用OSとしてMONITOR VII(1974年完成)を開発した.MONITOR Vでは,世界に先駆けて対称型密結合マルチプロセッサシステムを実用化するとともに同社として初めてTSS機能を提供した.

(4)FACOM 230-5シリーズ,FACOM 230-8シリーズ用中型OSおよび大型OS
富士通は,1968年に中型汎用機FACOM 230-25およびFACOM 230-35用としてバッチ処理用のBOSとリアルタイム処理用のROS,大型汎用機FACOM 230-45SおよびFACOM 230-55用OSとしてOS 45(後にOSIIと改名)を発表した.
1973年には,FACOM 230-8シリーズ用として仮想記憶制御を実現した中型OS BOS/VS,大型OS OSII/VSを発表した.OSII/VSでは,富士通で初めて多重仮想記憶制御を実現した.

(5)統一アーキテクチャを採用したMシリーズOS OSIV/F4,OSIV/X8,OSIV/F2
富士通は,汎用コンピュータFACOM Mシリーズ用に超大型汎用OS OSIV/F4,性能価格比に優れた大型汎用OS OSIV/X8および中規模業務に最適な中型汎用OS OSIV/F2の三つのOSを開発した.
以後,これらの3つのOSは,新しいハードウェアのサポートを初め種々の機能強化がなされ,超大型汎用OS OSIV/F4は,OSIV/F4 MSPOSIV/MSP(MSP-EX)へ,大型汎用OS OSIV/X8は,OSIV/X8 FSPOSIV/XSPへとそれぞれ発展した.中型汎用OS OSIV/F2は,OSIV/ESP V2OSIV/ESPIIIを経て,OSIV/XSPに統合された.また,MシリーズOSの上には統合的なオンラインデータベース(DB/DC)製品が初期から揃えられた.

(6)仮想計算機用OS AVM,AVM/EF,AVM/EX
富士通は,1980年にメインフレーム用仮想計算機OS AVM(Advanced Virtual Machine)を出荷した.その後のハードウェア機構の高速VM機構を利用したAVM/EF(1982年発表)および拡張VM機構を利用したAVM/EX(1989年発表)では,仮想計算機OSのオーバヘッドを大幅に削減し,複数のOSを効率良く動作する機能を提供した.

(7)メインフレーム用UNIX UTS/M,UXP/M
富士通は,1982年にUNIXシステムVリリース2.0を同社のMシリーズに移植したUTS/Mを,1990年にUNIXシステムVリリース4に準拠したUXP/Mを発表し,メインフレームの高処理能力と豊富な周辺機器をUNIXシステムで利用できるようにした.