UTS/Mは富士通のメインフレーム用UNIXオペレーティングシステム(以下OS)であり,1985年4月に発表された.UTS/Mは,米国アムダール社が開発したメインフレーム用UNIXであるUTS (Universal Time-sharing System)をベースに,富士通の汎用コンピュータFACOM Mシリーズ用に機能を拡張したUNIXシステムであった.
1990年8月には,最新の国際標準UNIXシステムVリリース4を採用した世界初のメインフレームUNIX UXP/Mが発表された.UXP/VはUXP/Mの後継OS として,ベクトルパラレル方式のスーパーコンピュータFUJITSU VXシリーズ/VPP300シリーズと同時に1995年2月に発表された.
以下に富士通のメインフレームUNIXの歴史,UTS/MおよびUXP/Mの特長について説明する.
1. 富士通のメインフレームUNIXの歴史
UNIXは1969年米国のAT&Tベル研究所で会話性の良さを追求したOSとして誕生した.米国アムダール社は,社内のプログラム開発の効率化のためUNIXをメインフレームに移植して社内で使用していたUTSを1981年に商品化した.
1985年1月に,富士通はアムダール社との合意に基づき,アムダール社が開発したUTSを同社のメインフレーム Mシリーズおよびスーパーミニコン S-3000シリーズに移植することを発表した.
1985年4月に,Mシリーズ用UNIXとしてUTS/M,S-3000シリーズ用UNIXとしてUTS/Sを発表した.
UTS/MおよびUTS/Sは,アムダール社が開発したUTSをもとに,富士通のMシリーズおよびS-3000シリーズのハードウェアを活かすための拡張,同社の周辺機器のサポート,日本語サポートなどの拡張がなされた.UTS/MおよびUTS/Sは,大学や研究機関分野を中心に使われた.
その後,1987年7月にスーパーコンピュータVPシリーズEモデルが発表された時に,UTS/MのスーパーコンピュータVPのサポートと仮想計算機システムAVMのUTS/Mサポートが発表された.しかしながら,この時点ではVPシステムのスカラ機能のみが使用可能でありベクトル機能は使用できなかった.1988年12月のスーパーコンピュータ VP2000の発表時に,UTS/M用にVP2000をサポートするVPO (VP Option)が発表され,ベクトル機能が使用可能となった.
1990年8月に,当時の最新の国際標準UNIXシステムVリリース4をMシリーズに移植した世界初のメインフレームUNIX UXP/M(*)が発表された.UXP/Mは,Mシリーズの拡張アーキテクチャへの対応による大規模メモリ空間の利用や,ファイルサイズの拡張などにより,より大規模なメインフレームシステムを構築可能とした.
その後,UXP/Mの適用の中心はFUJITSU VP2000シリーズのようなスーパーコンピュータに移っていった.そして,同社のスーパーコンピュータがベクトルパラレルと呼ばれる並列性を備えた方式に移行するに伴い,UXP/Mの役割は並列処理への対応力を高めたUXP/Vへと引き継がれた. 同社のベクトルパラレル方式のスーパーコンピュータは,1992年9月に発表されたFUJITSU VPP500が最初であるが,当時はまだUXP/Mが使用された.並列処理への対応力強化を図ったUXP/Vは,1995年2月,ベクトルパラレル方式の新たなシリーズ(FUJITSU VXシリーズ/VPP300シリーズ)の発表の際に,UXP/Mの後継として発表された.
UNIXは1969年米国のAT&Tベル研究所で会話性の良さを追求したOSとして誕生した.米国アムダール社は,社内のプログラム開発の効率化のためUNIXをメインフレームに移植して社内で使用していたUTSを1981年に商品化した.
1985年1月に,富士通はアムダール社との合意に基づき,アムダール社が開発したUTSを同社のメインフレーム Mシリーズおよびスーパーミニコン S-3000シリーズに移植することを発表した.
1985年4月に,Mシリーズ用UNIXとしてUTS/M,S-3000シリーズ用UNIXとしてUTS/Sを発表した.
UTS/MおよびUTS/Sは,アムダール社が開発したUTSをもとに,富士通のMシリーズおよびS-3000シリーズのハードウェアを活かすための拡張,同社の周辺機器のサポート,日本語サポートなどの拡張がなされた.UTS/MおよびUTS/Sは,大学や研究機関分野を中心に使われた.
その後,1987年7月にスーパーコンピュータVPシリーズEモデルが発表された時に,UTS/MのスーパーコンピュータVPのサポートと仮想計算機システムAVMのUTS/Mサポートが発表された.しかしながら,この時点ではVPシステムのスカラ機能のみが使用可能でありベクトル機能は使用できなかった.1988年12月のスーパーコンピュータ VP2000の発表時に,UTS/M用にVP2000をサポートするVPO (VP Option)が発表され,ベクトル機能が使用可能となった.
1990年8月に,当時の最新の国際標準UNIXシステムVリリース4をMシリーズに移植した世界初のメインフレームUNIX UXP/M(*)が発表された.UXP/Mは,Mシリーズの拡張アーキテクチャへの対応による大規模メモリ空間の利用や,ファイルサイズの拡張などにより,より大規模なメインフレームシステムを構築可能とした.
*:UXP = The UNIX Product
その後,UXP/Mの適用の中心はFUJITSU VP2000シリーズのようなスーパーコンピュータに移っていった.そして,同社のスーパーコンピュータがベクトルパラレルと呼ばれる並列性を備えた方式に移行するに伴い,UXP/Mの役割は並列処理への対応力を高めたUXP/Vへと引き継がれた. 同社のベクトルパラレル方式のスーパーコンピュータは,1992年9月に発表されたFUJITSU VPP500が最初であるが,当時はまだUXP/Mが使用された.並列処理への対応力強化を図ったUXP/Vは,1995年2月,ベクトルパラレル方式の新たなシリーズ(FUJITSU VXシリーズ/VPP300シリーズ)の発表の際に,UXP/Mの後継として発表された.
2. UTS/Mの特長
以下に,UTS/Mの主な特長を示す.最大の特長は,UNIXシステムの機能を損なうことなく,強力な処理能力および豊富な周辺機器を有するメインフレームを使えることであった.
以下に,UTS/Mの主な特長を示す.最大の特長は,UNIXシステムの機能を損なうことなく,強力な処理能力および豊富な周辺機器を有するメインフレームを使えることであった.
(1) 標準UNIX機能への対応
UTS/MはUNIX システムVリリース2.0をベースとし,標準UNIX機能に対応しているため,異なるアーキテクチャのコンピュータとの相互接続およびこれらのコンピュータでの同一アプリケーションの利用が可能となった.具体的には,システム間接続のための実質標準であるTCP/IP手順,socketインタフェースなどバークレー系UNIXのネットワーク機能を有し,さらにはNFS,X Window Systemなどの標準的なネットワークアプリケーションを実現した.
UTS/MはUNIX システムVリリース2.0をベースとし,標準UNIX機能に対応しているため,異なるアーキテクチャのコンピュータとの相互接続およびこれらのコンピュータでの同一アプリケーションの利用が可能となった.具体的には,システム間接続のための実質標準であるTCP/IP手順,socketインタフェースなどバークレー系UNIXのネットワーク機能を有し,さらにはNFS,X Window Systemなどの標準的なネットワークアプリケーションを実現した.
(2) メインフレームの強力な処理能力と豊富な周辺機の利用
UTSでは標準のUNIXに対してMシリーズの高い処理能力を活かすため,以下のような拡張を行った.
UTSでは標準のUNIXに対してMシリーズの高い処理能力を活かすため,以下のような拡張を行った.
- 多重仮想記憶制御方式の採用による効率的なプロセス管理と,OS空間とユーザプログラム空間を別空間に分離することによる16メガバイトのユーザプログラム空間の提供
- ファイルシステムのブロックサイズを4キロバイトに拡張(System IIIは512バイト,System Vは1キロバイト) してファイルアクセスの高速化を実現するとともに,実メモリ上にファイルシステムを展開(仮想入出力)することにより作業ファイルの高速アクセスを実現
これらの拡張により,メインフレームの高いCPU処理能力ばかりでなく,高いI/Oスループットを活かすことができた.また,大容量・高性能な磁気ディスク装置,高速なプリンタ装置など,ミニコンやワークステーションと比べ格段に優れた周辺機器を利用可能となった.この結果,UTS/MはUNIXシステムの中で群を抜くトータル処理能力を発揮した.(3) 信頼性・運用性
UTS/Mは多数の利用者を対象としており,取り扱うデータも大量であった.そのため,UTS/Mでは信頼性の向上と運用性の向上にも努力が注がれた.たとえば,マシンチェックやチャネルチェック処理,自動パスリカバリなどハードウェアの機能を利用して信頼性の向上を図った.また,自動運転機能,利用者ごとの使用資源制限機能,ファイルバックアップシステムなどが提供された.
UTS/Mは多数の利用者を対象としており,取り扱うデータも大量であった.そのため,UTS/Mでは信頼性の向上と運用性の向上にも努力が注がれた.たとえば,マシンチェックやチャネルチェック処理,自動パスリカバリなどハードウェアの機能を利用して信頼性の向上を図った.また,自動運転機能,利用者ごとの使用資源制限機能,ファイルバックアップシステムなどが提供された.
(4) 仮想計算機システムAVMによる他のMシリーズ用OSとの共存が可能
AVM配下でUTS/MとMシリーズ用OS(たとえばOSIV/F4 MSP)を共存させることにより,2つのOSシステム間で双方のファイル転送やジョブ転送が可能であり,既存システムとUNIXシステムの融合に効果的であった.
AVM配下でUTS/MとMシリーズ用OS(たとえばOSIV/F4 MSP)を共存させることにより,2つのOSシステム間で双方のファイル転送やジョブ転送が可能であり,既存システムとUNIXシステムの融合に効果的であった.
3. UXP/Mの特長
UXP/Mは,Mシリーズ拡張アーキテクチャEXA(EXtended system Architecture)を実装しているMシリーズとVP2000シリーズで動作可能であり,以下の特長を有した.
UXP/Mは,Mシリーズ拡張アーキテクチャEXA(EXtended system Architecture)を実装しているMシリーズとVP2000シリーズで動作可能であり,以下の特長を有した.
(1) UNIXシステムVリリース4をベースに先進機能を追加
UNIXは,元々中小規模のコンピュータ上で動作することを想定して作られていた.UXP/Mでは,大規模システムへの対応(最大256チャネル,2ギガバイトのユーザ空間,2ギガバイト以上のファイルサイズ,自動運転機能,磁気テープライブラリを使った大量データのバックアップなど)および高速計算システムへの対応(VP2000のベクトル演算機能の利用,システム記憶装置のサポート,マルチプロッセサのサポート)のためMシリーズやVPシリーズで培った先進機能を追加した.
UNIXは,元々中小規模のコンピュータ上で動作することを想定して作られていた.UXP/Mでは,大規模システムへの対応(最大256チャネル,2ギガバイトのユーザ空間,2ギガバイト以上のファイルサイズ,自動運転機能,磁気テープライブラリを使った大量データのバックアップなど)および高速計算システムへの対応(VP2000のベクトル演算機能の利用,システム記憶装置のサポート,マルチプロッセサのサポート)のためMシリーズやVPシリーズで培った先進機能を追加した.
(2) 高速ネットワーク
100メガバイト/秒の高速LANであるFDDI(ISO規格)や1ギガバイト/秒の超高速LANのUltraNETをサポートした.
100メガバイト/秒の高速LANであるFDDI(ISO規格)や1ギガバイト/秒の超高速LANのUltraNETをサポートした.
(3) UTS/Mとの互換性
既存のUTS/Mで開発されたプログラムの上方互換(ソース/オブジェクト/ロードモジュール互換)を保証した.
また,仮想計算機(AVM/EX)配下でのOSIV/MSPシステムとの連携機能など,運用機能においてもUTS/Mの実績を継承した.
既存のUTS/Mで開発されたプログラムの上方互換(ソース/オブジェクト/ロードモジュール互換)を保証した.
また,仮想計算機(AVM/EX)配下でのOSIV/MSPシステムとの連携機能など,運用機能においてもUTS/Mの実績を継承した.