OSIV/X8(*)は,富士通の汎用コンピュータFACOM Mシリーズ用のオペレーティングシステム(以下OS)の1つで,超大型汎用OSであるOSIV/F4と中型汎用OSであるOSIV/F2の中間に位置する大型汎用OSであり,1975年9月に発表された.
OSIV/X8は,FACOM 230-8シリーズ用OSであるOSII/VSの上位互換性を保持しつつ,中規模システムから大規模システムまで幅広くサポートし,かつ大規模システムの機能,性能を大きく落とすことなく,これを中規模システムに適用することを狙って開発された.そのため,制御プログラムの基本構造をOSIV/F4に準拠させながらも,仮想記憶制御方式についてさまざまな工夫がなされた.1977年10月にバッチ機能,1978年3月にリモートバッチ機能(RES:Remote Entry Services)とオンラインデータベースAIM (Advanced Information Manager)が,それぞれ完成した.これによりFACOM 230-8シリーズのOSII/VSユーザは運用資産(プログラム,データファイル,ジョブプロシジャなど)の互換性を保証されたかたちでMシリーズに移行することができ,かつMシリーズの新しいハードウエア,ソフトウエアを利用することができるようになった.
OSIV/X8は,1983年2月に発表されたOSIV/X8 FSPに引き継がれた.
以下に,OSIV/X8の特長,主な機能および機能強化について述べる.
なお,OSIV/X8 FSPについては別項で述べる.
*:OSIV/X8は「オー・エス・フォー・エックス・エイト」と発音された.OSIVは,第四世代のOSを指向するという意図でFACOM MシリーズのすべてのOSの名前の先頭に付けられた.
OSIV/X8は以下の特長を有した.
OSIV/X8は,OSIV/F4とOSIV/F2の間に位置する大型汎用OSであり,バッチ処理,リモートバッチ処理(RES),会話型処理(TSS:Time Sharing System),オンラインデータベース処理(AIM),分散処理といった各種処理の同時動作を実現した.
FACOM M-100シリーズの最下位機種から最上位機種まで,主記憶サイズは256キロバイトから16メガバイト(OSIV/X8発表当時の超大型機FACOM M-190の最大主記憶容量)まで広範囲なシステム規模をサポートした.
オンラインデータベース構築に必要な機能をサブシステムに体系化し,システムの拡張性と柔軟性,開発と運用の容易性を実現した新しいオンラインデータベースAIMを提供した.
ユーザが蓄積したソフトウェア資産の有効利用を図るため,OSII/VSの応用プログラムソースプログラム,ファイルおよびジョブ制御文と互換性を保持した.また,統合エミュレータ(OSII/VSコンパティブルエグゼキュータ)により.OSII/VSの応用プログラムロードモジュールの動作を可能とした.
OSIV/X8は,以下の機能を有した.
OSIV/X8は,最大255個の仮想空間を持つことができる多重仮想記憶制御方式を採用し,各空間は16メガバイトの仮想記憶を持つことができた.
一方,超大型OSであるOSIV/F4と同様な多重仮想記憶制御方式の採用は,OSの必要主記憶量を増大させ,中規模システムへの適用も目的とするOSIV/X8にとっては解決すべき大きな課題であった.そのため,OSIV/X8では多重仮想記憶制御方式にさまざまな工夫を加えた.一般的なLRU (Least Recently Used)制御に加えて,仮想記憶上でのプログラムの制御移行状況をページリプレースメント論理に反映し(制御プログラム領域に対してはVSオーバーレイ制御,一般ジョブ領域に対してはロールイン・ロールアウト制御),主記憶の有効利用を進めた.
AIMでは,オンラインデータベースを構築するために必要な機能を下記に示す7種類に体系化し,5種のソフトウェアコンポーネントを提供した.
OSIV/X8では,ジョブスケジューリング機能(ジョブグループ制御,ジョブ制御マクロ,マクロの多重呼び出しとオーバーライド機能など),容易にシステム規模に見合った最適OSを生成する機能,センタ運用機能SMF (System Management Facilities)など,運用性を向上させる機能を提供した.また,操作性を向上させる機能として,操作指令マクロ機能,ライトペンやファンクションキーの使用によりオペレータとの会話を容易にする機能,カラーディスプレイ装置をコンソールとして使用してジョブの実行状態や資源の利用状況などを表示する動的状態表示機能などを提供した.
OSIV/X8は,1975年9月の発表後,OSの機能強化や新規ソフトウェアの提供が行われた.下表に主なものを示す.
発表時期 | 主な特長 | Edition | 提供時期 |
---|---|---|---|
1975年9月 |
・大型汎用OS OSIV/X8発表
-制御プログラム,TSS,AIM,HICS,言語処理プログラム,サービスプログラム |
E10 E16 E20 |
1977年10月〜1978年3月 |
1979年4月 |
・日本語情報システムJEFをサポート
|
E30 | 1980年6月 |
1979年10月 |
・新ソフトウェアの提供
-対話形式により使いやすさを向上させた各種プログラム AIF (*1),GEM (*2),AIDS (*3) -運用の自動化・省力化ためのツール AOF (*4) -エンドユーザを志向したデータ検索システムDQS (*5),レポートを出力するツールSTAFF/X |
E30B | 1980年10月 |
1980年10月 |
・生産性を向上させるソフトウェアの提供
-高生産性言語 HYPER COBOL,開発ツールACS(*6),自動仕様書作成PAGE(*7) ・エンドユーザ志向の対話型統合システムINTERACTの提供(QUERY,SPEAKEASYIII,STAFF/X)
|
E40 | 1981年10月 |
1983年2月 |
・JEFIIのサポート
|
E40 | 1984年10月 |
*2 GEM:Generalized program Editing and Management Facility
*3 AIDS:AIM Information Display Support System
*4 AOF:Advanced Operation Facility
*5 DQS:Display Based Query System
*6 ACS:Application Control Support System
*7 PAGE:Program Specification Auto GEnerator