【富士通】 OSIV/F2

OSIV/F2(*)は,富士通の汎用コンピュータFACOM Mシリーズ用のオペレーティングシステム(以下OS)の1つで,中規模業務向けの中型汎用OSである.OSIV/F2は,同社の中型汎用OS BOSおよびBOS/VSの後継OSとして1974年11月に発表され,1977年1月から出荷が開始された.
以下に,OSIV/F2の特長,主な機能および機能強化について述べる.

*:OSIV/F2は「オー・エス・フォー・エフ・ニ」と発音された.OSIVは,第四世代のOSを指向するという意図でFACOM MシリーズのすべてのOSの名前の先頭に付けられた.

1. OSIV/F2の特長

当時,多様化した情報処理のニーズを満たすために,中型汎用OSには使いやすさと経済性に加えて,大型汎用OSの機能が要求されていた.OSIV/F2はこのような点を考慮して開発され,以下のような特長を有した.

(1) Mシリーズの中型機から大型機まで広い性能レンジをカバー
DAT (Dynamic Address Translation)機構の効果的活用により最大16メガバイトの仮想記憶空間を提供.また,上位OSのOSIV/F4およびOSIV/X8と同様に,Mシリーズのアーキテクチャの特長とするチャネルDATを採用するなど,システム性能を向上させる各種機能を取り込み,中型機から大型機まで広範囲な性能レンジをカバーした.
(2) オンラインデータベース AIM (Advanced Information Manager)の提供
豊富なオンライン機能と充実したデータベース管理機能を統合した総合的なオンラインデータベース AIMの提供により,業務に合わせたオンラインアプリケーションプログラムの開発を容易にした.
(3) 使いやすさと効率化を実現した運用機能の提供
制御文作成の煩わしさからユーザを解放するカタログドプロシージャ機能と標準ファイル定義機能の提供による運用の容易さと,自動スプーリング機能やシステム管理者のための会計情報機能の提供によりシステム運用の効率化を実現した.
(4) 互換性
OSIV/F2は,従来の中型汎用OSであるBOSおよびBOS/VSからの上向きの互換性を実現した.また,業界標準のDOS/VSとの互換機能も提供された.

2. OSIV/F2の主な機能

OSIV/F2は,以下の機能を有した.

(1) 仮想記憶制御
OSIV/F2は,OSIV/F4OSIV/X8が採用した多重仮想記憶制御方式ではなく単一仮想記憶制御方式を採用し,最大16メガバイトの仮想記憶空間をサポートした.
OSIV/F2では,実記憶領域をスーパーバイザ常駐領域とページプールとに区分し,後者は仮想記憶領域で実行されるプログラムのために使用された.この仮想領域はパーティション(partition)と呼ばれる処理プログラムの実行領域と共通資源として利用される共通仮想領域SVA (Shared Virtual Area)から構成された.
スーパーバイザは,最大5個(*1)のパーティションで実行される処理プログラムおよび共通プログラムを2キロバイト単位でページプールから動的に割り当てた.スーパーバイザは,特殊なページ操作を必要とするプログラムのために,ページ固定・ページイン・ページアウトなどの機能を提供した.

*1:パーティション数は,当初は最大5個であったが,後に8個,さらに12個まで拡大された.
(2) オンラインデータベース OSIV/F2 AIM
OSIV/F2では,オンラインデータベースAIMを上位OSとの連続性を保ちながら提供した.このOSIV/F2 AIMは,COBOLやPL/Iなどの高級言語により,容易にオンラインアプリケーションプログラムの作成を可能とし,以下の特長を有した.
- 豊富なオンライン機能の提供 (メッセージ制御機能)
- 充実したデータベース管理 (階層ネットワーク構造,検索更新機能など)
- 豊富なシステム開発の手段 (デバッグ手段,データベース設計用各種ユティリティ)
- 容易なシステム運用 (動作環境の容易な設定,センタオペレータの負荷の軽減)
- 高信頼システムの実現 (動的占有による排他制御,リカバリ・リスタートのためのログ取得)
- 高い処理能力の実現 (システムに見合ったマルチプログラミング,効率の良いデータベースアクセス)
(3) 大幅に効率を向上させた操作機能・運用機能
OSIV/F2では,JES (Job Entry Subsystem)を中心として運用面,操作面の効率の大幅な向上が図られた.以下にこれらの中で代表的な機能を示す.
- 直接アクセス装置を使用してジョブの投入と取り出しを行うJESのスプーリング機能
- JESのウォームスタート/コールドスタート,オペレータへの用紙番号の通知,印刷出力のリスタートなどの機能
- 充実したジュブスケジューリング機能
- システム状態やジョブ状態のディスプレイコンソールへの動的状態表示機能
(4) リモートバッチを実現するRES (Remote Entry Services)
OSIV/F2では,リモートバッチ処理を実現するためRESを提供した.このRESは,OSIV/F2がセンタとなり遠隔地の端末からのバッチジョブの投入と取り出しの制御を行うホストサービス機能と,OSIV/F2が端末となる形態で入力装置から入力されたジョブをセンタに送り,実行が終了したジョブの結果を出力装置に取り出す制御を行う端末サービス機能を提供した.

3. OSIV/F2の機能強化

OSIV/F2は,DOS/VS互換版(E10)が1977年1月,BOS/VS互換版(E16)が1978年5月,OSIV/F2 AIM(DC)が1978年7月に完成した.その後,1979年に,日本語情報システムJEFのサポートを発表した.
1982年6月に,中型汎用コンピュータM-310,320とOA (Office Automation)の中核コンピュータの提供のためOSIV/F2をベースとした新しい中型汎用OS OSIV/ESP V2を発表した.このOSIV/ESP V2では,開発と運用を容易にするリレーショナル型データベースDB/E II,オフィスワークを支援するOAプロダクト,およびオフィスコンピュータFACOMシステム80やパーソナルコンピュータFACOM 9450IIを回線接続して整合性のとれた分散システム実現する機能を提供した.
OSIV/ESP V2は,1984年6月に発表された新OS OSIV/ESP IIIに引き継がれた.