【富士通】 OSIV/F4

OSIV/F4 (*)は,富士通の汎用コンピュータFACOM Mシリーズ用のオペレーティングシステム(以下OS)の1つで,超大型汎用OSである.1974年11月に,超大型汎用コンピュータFACOM M-190と同時に発表された.
以下に,OSIV/F4の特長,主な機能,および機能強化について述べる.

*: OSIV/F4は「オー・エス・フォー・エフ・ヨン」と発音された.OSIVは,第四世代のOSを指向するという意図でFACOM MシリーズのすべてのOSの名前の先頭に付けられた.

1. OSIV/F4の特長

OSIV/F4は,最高水準の機能と性能を提供するために新規に開発され,以下の特長を有した.

(1) 高処理能力,拡張性および高信頼システムを実現
多重仮想記憶制御方式の採用,最大4CPU構成のマルチプロセッサ制御などFACOM Mシリーズのハードウェアを効率的に制御し,高いシステム処理能力と拡張性を実現した.
また,ハードウェアのRAS (Reliability Availability Serviceability)機能と連携して高信頼システムを構築するための機能を提供した.
(2) オンラインデータベースAIM (Advanced Information Manager)の提供
新しい概念に基づいてオンライン機能とデータベース機能を統合したオンラインデータベースAIMを提供.最適なオンラインデータベースシステムを容易に構築できるようにした.
(3) 使いやすいシステム運用機能
オペレータの負担を軽減するため操作性を向上させた各種機能,ファイルを統一的に管理する機能,容易なジョブスケジューリング機能など,使いやすいシステム運用機能を提供した.
(4) 容易なアプリケーション開発を実現する機能
高水準の言語処理プログラムの提供,プログラム開発を容易にする言語処理プログラムの高度な機能,TSSによるアプリケーション開発などの機能と手段を提供した.
(5) 国際互換機能
IBM OS/VS1のジョブ制御言語,応用プログラムソースプログラム/ロードモジュール,データファイルの上方互換を実現した.
2. OSIV/F4の主な機能

OSIV/F4の主な機能を下記に示す.

(1) システムの処理能力と拡張性を高める機能
以下の機能により高いシステム処理能力の実現とシステムの拡張性を図った.
- 16メガバイトの仮想空間を最大1,536個割り当て可能な多重仮想記憶制御機能
- 最大4CPU構成(FACOM M-200で実現)での密結合マルチプロセッサ制御機能
- チャネルDAT (Dynamic Address Translation)やチャネルクロスコールの活用によりOSの入出力制御のオーバヘッドを削減
- 処理能力とファイル装置の使用率の向上を図ったアクセス法VSAM (Virtual Storage Access Method)
- システムの処理効率の向上を図る仮想入出力(VIO:Virtual Input Output)機能
一時的ファイルを,仮想記憶空間に割り当て,この仮想記憶空間をアクセスすることにより,入出力動作の高速化を実現
-通信アクセス法VTAM (Virtual Telecommunication Access Method)と通信制御処理装置CCP (Communication Control Processor)で動作するNCP (Network Control Program)を提供.従来,ホストコンピュータで行っていた機能の一部をこのNCPに代行させることにより,システム全体の負荷分散を実現し,効率を高めた.


図 OSIV/F4 システム内の仮想空間構成(例)

図 OSIV/F4 システム内の仮想空間構成(例)


(2) オンラインデータベース AIM
AIMでは,オンラインデータベースを構築するために必要な機能を下記に示す7種類に体系化し,5種のソフトウェアコンポーネントを提供した.
- メッセージ制御 (DCMS:Data Communication Management Subsystem)
- データベース管理 (DBMS:Data Base Management Subsystem)
- 運用管理 (ISMS:Integrity and Schedule Management Subsystem)
- AIMシステムの資源管理 (DDMS:Dictionary and Directory Management Subsystem)
- サポート機能 (各種ユーティリティ)
ユーザは,ソフトウェアコンポーネントが提供する機能を選択し,組み合わせることにより容易に小規模から大規模までオンラインデータベースシステム向けの応用プログラムを作成できた.
(3) システム運用機能
システム運転を効率よく行う機能およびシステム操作を容易に行う機能を提供した.
- JES (Job Entry Subsystem)によりジョブの投入と実行結果の取り出しを統一的かつ効率的に管理
- 目的別または用途別コンソールを使用可能とするMCS (Multiple Console Support)機能
- 効率的なボリュームの取り扱いを可能とするAVR(Automatic Volume Recognition)機能
- プログラムの応答性の保証とシステム資源の有効利用を図るSDM (System Decision Management)
- ファイルの統一管理機能
- 容易なジョブスケジューリング機能
- SMF (System Management Facilities)によるセンタ運用機能
(4) RAS (Reliability Availability Serviceability)機能
OSIV/F4では,ハードウェアと連係して,高信頼システムを実現するための各種RAS機能を提供した.代表的なものとして回復管理機能 RMS (Recovery Management Support)がある.RMSは,本体系および入出力系のハードウェアの障害をOSにより可能な限り回復させる.もし,回復不可能と判断したら,その装置を切り離し,システムへの影響を最小限にしてシステム運用を続けるようにした.また,マルチプロセッサシステム時に,障害が発生したCPUを自動的に切り離し,このCPUで行っていた処理の回復処理や終了処理を別のCPUで実行するACR(Alternate CPU Recovery)機能や,CPU,主記憶,およびチャネル装置の切り離しと組み込みを容易にする構成制御機能を提供した.
3. OSIV/F4の機能強化

OSIV/F4のバッチ機能が1975年10月,リモートバッチ機能が1976年2月,TSS機能が1977年3月,オンラインデータベースAIMが1977年6月に,それぞれ完成した.その後各種の機能強化が行われたが,その中の主な機能としては,1979年に発表された日本語情報システムJEFのサポートがある.
また,OSIV/F4は,仮想記憶空間を16メガバイトから2ギガバイトへ拡大(16ビットアドレスから31ビットアドレスへ拡大)したOSIV/F4 MSP(1982年6月発表)へ引き継がれた.

 
FACOM OSIV JEF 解説書 (表紙)FACOM OSIV JEF 解説書 (内容一部)