東芝オフィスコンピュータ用オペレーティングシステム概説史

1.初期のオフコン(1960年代~1970年代)
 東芝のオフィスコンピュータ(以下オフコンと略す)は,1963年に発売された超小型電子計算機TOSBAC-1100Aが最初で,事務処理の電算化普及と汎用機データ入力の効率化を狙い開発された.当時の低価格コンピュータへの強いニーズに支えられ1100B,1100D,1100E等を順次リリースしTOSBAC-1100シリーズとしてラインアップ化された.
 1973年に発売開始された,TOSBAC-1150シリーズ(モデルI~VI)とTOSBAC-1350シリーズ(モデルI~V)は,伝票発行処理を基本とし,オプションで通信制御モジュールを組み込めばオンラインシステム対応も可能であった.また,管理プログラム,アプリケーションプログラム(販売管理,在庫管理など),開発言語(プレパックなど)も用意され,オフコンとしての基本機能がこの時代に固まった.
 1977年に同時発表したTOSBACシステム15,35,55シリーズは,東芝として「オフィスコンピュータ」という名称を使い始めたCRTディスプレイ付きのオフコンで,同社として初めて名前の付いたOS”MIGHTY”を搭載するなど,この後の同社のオフコンを特徴付けるコンセプト,機能が提供された.また,1978年には,わが国初の本格的漢字オフコンTOSBAC漢字システム15を発表した.
2.分散処理計算機DPシリーズ,TOSBAC Qシリーズの時代(1970年代末~1980年代中葉)
 分散処理計算機DP/6は,1978年に東芝が開発した,ホストを選ばずに接続できるインテリジェント端末とマルチタスク型オフコンの両者の機能をもつコンピュータで,インテリジェント端末用途には「分散処理計算機DPシリーズ」として順次,DP/OAターミナル,2,4,8をシリーズ化した.DPシリーズをベースに,本格的マルチワークステーションオフコンとして「TOSBACシステム15モデル60,システム45,システム65,システム85」を販売した.COBOLプログラム実行に最適なCPU(16ビット)命令セットの実現,CODASYL型DB搭載,ネットワーク上のコンピュータ資源をネットワークを意識せず利用可能とするDPNET,プログラミングと印刷/画面帳票形式の分離などを実現した.
 1984年にCPUを32ビット化した最上位機Q-800を販売開始し,翌1985年に16ビットCPU搭載の下位機種(Q-700,Q-600,Q-500,Q-200,Q-100)を発売し,TSOBAC Qシリーズとしてシリーズ化した.Qシリーズでは,OA(Office Automation)の中核コンピュータを目指し,「オフコン名称」をやめて「トータルOAプロセッサ」の名称を使った.DPシリーズで完成した水平垂直分散処理機能「DPNET」を移植し,「TOPNET」として提供し,また,OA向き機能(OACALC3:作表計算,OAJEDS:文書作成,OAGRAPH:グラフ作成,OADRAW:作図)に加えイメージ処理ワークステーションJ-5070,イメージ処理専用プロセッサ,ファクシミリ通信制御などによる本格的なイメージ処理を実現した.
3.V-7000シリーズ,TP90シリーズおよびTP90Fシリーズの時代(1980年代中葉以降)
 1987年に32ビットアーキテクチャによる多目的コンピュータのV-7050,V-7060,V-7070の3モデルを発売し,翌1988年にV-7040,V-7030を発売しV-7000シリーズとしてラインアップした.V-7000シリーズ(OS名称:OS-V)では,分散処理コンピュータ「DPシリーズ」,OAプロセッサ「Qシリーズ」のアーキテクチャを統合し,シリーズ統一化を行った.ソフトウェア機能には,V-7000シリーズ,DPシリーズ,Qシリーズによる分散処理を可能とする「VNET」,OSI(開放型システム相互接続)/FTAM・MHS,ソフトウェア開発支援機能(MYSTAR:ソフトウェア統合開発支援環境,SPCLAN:仕様書からのプログラム自動生成),リレーショナルデータベース(RDB/V),アドバンストOA機能(VCAST:統合作表計算(RDB/Vへのアクセス実現)など)を提供した.
 1990年にTP90/70モデルを販売開始,翌1991年に下位モデルであるTP90/20,30,40,50,60の各モデルを販売開始してTP90シリーズ(OS名称:OS-Ⅶ)のラインアップを整えた.TP90シリーズは,アドオンエンハンスメントと呼ぶクラスタ構成では50倍の性能レンジを実現し,さらに業務量やデータベース容量増加に伴う段階的拡張がユーザの運用現場で可能とした(フィールドアップグレード).また,トランザクション処理をネットワーク内のコンピュータに分散して持たせる分散形のOLTP機能「分散OLTP」を実現した.
 1990年代の前半からクライアント・サーバ型のシステム形態が多くなり,TP90もクライアントにPCを使い,TCP/IPによるLAN接続も当たり前となり,データベースサーバ,通信サーバ,プリントサーバの用途に使われることが多くなった.このため1994年からは,「オフィスサーバ」に名称を統一した.1996年にはTP90Fシリーズ(OS名称:OS-ⅦF)を開発・販売することで,ユーザがハードウェアコンポーネントの選択により業務により最適なサーバ構成を実現可能とした.