【東芝】初期の東芝オフコンOS

TOSBAC-1100E用ソフトウェア
TOSBAC-1100シリーズは,カナタイプライター,紙テープおよびエッジカードを取り扱う入出力機器と演算制御装置から構成されるデスク形式の計算機で,事務用超小型電子計算機と呼ばれた.プログラム実行方式には,紙テープにせん孔されたプログラムを一命令ずつ読み込んでは実行する外部プログラム方式を採用している. 1963年にTOSBAC-1100Aを開発・発表,翌年にはTOSBAC-1100Dを開発・発表している.TOSBAC-1100Eは,3番目のモデルであり,1968年に発表した. 演算,入出力機器の制御や分類集計プログラムテープ作成等には,TOSBAC-3400で実用化したマイクロプログラム制御方式を採用した. また,アセンブリ用プログラムを用意するとともに,紙テープリーダを8単位テープ対応することでユーザがプログラムを簡単に自製できるようにした.
TOSBAC-1350用ソフトウェア
TOSBAC-1350は,磁気ディスク(2.45メガバイト)と高速の低騒音ドットマトリックス方式シリアルプリンタを標準装備した事務用小型計算機で,1973年に発売された. 小規模システムのセントラルマシン,大規模システムのブランチマシン,オンラインシステムのターミナルなどの用途をターゲットとしたが,オンラインシステム対応については, 公衆回線の開放が1972年から実施されておりその利用を見込み通信制御モジュールを用意した.ソフトウェア体系は,以下のようなものであった.
  • 管理プログラム:システム管理,ジョブ管理,データ管理
  • 処理プログラム:
    1)言語処理プログラム(MAP(アセンブラ),COBOL,FORTRAN,PPG(プログラムジェネレータ)),
    2)アプリケーションプログラム(販売管理,在庫管理など),
    3)サービスプログラム(システムユーティリティなど),ユーザプログラムとして構成していた.
OS部にあたる管理プログラムは,ハードウェアおよび処理プログラム統一的,効果的に管理・制御することでデータ処理を効率的に実行させることを目的に,以下の機能を準備した.
(1)システム管理
システムの初期始動,ハードウェア資源の管理,物理的な入出力の制御,
  割込みに対する処理,エラーに対する処理
(2)ジョブ管理
ジョブのスケジュールの制御,プログラムセグメントの制御,
オペレータとのコミュニケーション
(3)データ管理
論理的な入出力の制御,磁気ディスクファイル(順次編成,索引順次編成)の管理
  カセット磁気テープファイルの管理
  テンキー,キーボード,プリンタの論理レコードの処理
TOSBAC-1150システムVIシートファイルシステム用ソフトウェア
TOSBAC-1150システムVIシートファイルシステムは,1974年に発売された日本初のフロッピーディスク装置(FDD)ベースの超小型電子計算機.1973年にTOSBAC-1350と同時発売されたTOSBAC-1150シリーズ(システムI,II,III,IV,Vが発売済み)の最上位モデルである.伝票発行処理(帳票作成,分類集計,累計更新など)を基本に,オプションとして通信制御モジュールを用意しオンライン端末としての利用も可能とした.  販売管理業務などの業務処理を支援する共通プログラムに,PPG(プログラムジェネレータ)とそのテンプレートとして用意していた(名称:プレパック「PREPACK(Prepackaged Programming System)」).
TOSBACシステム15,35,55用ソフトウェアMIGHTY
TOSBACシステム15,35,55シリーズは,1977年に最初のモデルが同時発表された.TOSBAC-1150,TOSBAC-1350の後継機種として開発が進められ,東芝として「オフィスコンピュータ」という名称を使い始めた最初の機種である.ビリングから本格的なバッチ処理まで,さらにはリモートネットワークの各階層における分散処理システムとして広い領域をカバーするシリーズと位置づけられた.
 TOSBACシステム15は,フロッピーディスクを主入出力媒体とし,経済性と使いやすさを重視して開発したCRTディスプレイ付きオフィスコンピュータで,その特長は次の通りである.
(1)使いやすさの追求
  • CRTディスプレイの採用によりオペレータはシステムとの会話形式で操作できる
  • ジョブの中断と復帰により,実行中プログラムを一時中断し,緊急なジョブを実行し, その後もとのジョブに戻れる
(2)ビリングの高性能化,正確化
  • 高速シリアルプリンタの採用と人間工学的なキー配列や広い伝票置きスペースを考案
(3)システムの拡張性
  • 片面単密度フロッピーディスクと両面倍密度フロッピーディスクを用意
(4)オンライン機能
  • 公衆回線,特定回線を利用したオンラインシステムを実現できるようにし,標準装備の簡易言語(SCOPE-1)にバッチファイル伝送記述を持たせた
(5)豊富なアプリケーションプログラム
TOSBAC-1150,TOSBAC-1350シリーズの実績をもとに,さらに改良したアプリケーションプログラムを用意した.
ソフトウェア体系は,MIGHTY-1と命名し,以下のようなものであった.
  • 制御プログラム:スーパバイザ,データ管理,ジョブ管理,オンライン管理,システムユーティリティ
  • 処理プログラム:
    1) 言語処理プログラム(パラメータ型簡易言語SCOPE-1)
    2)ユーティリティプログラム
    3)アプリケーションプログラム(販売管理,在庫管理など)
    4)利用者プログラム
    *)利用者プログラムは,SCOPE-1に,四つの基本パターン(伝票発行,報告書作成,ファイル処理,オンライン処理)を用意し,パラメータ設定で簡単にプログラム作成できるようにした.
TOSBACシステム35は,TOSBAC-1350モデルIIIの後継機として,磁気ディスク(9.8メガバイト)を内蔵し,ソフトウェア体系MIGHTY-3には,MIGHTY-1の機能に加えてTOSBAC-1350からのプログラムの移行性を考慮したプレパックを用意した.
TOSBACシステム55は,TOSBAC-1350モデルVの後継機として,本格的バッチ処理を主体とし,さらに分散ネットワークシステムにおけるリモートコンピュータ,ホストコンピュータおよび端末としての役割を果たすよう開発された.ソフトウェア体系MIGHTY-5には,以下の特長を持たせた.
(1)マルチプログラミングによるシステムで,バッチ,あるいはオンラインのプログラムを5本多重処理可能
(2)事務処理言語COBOLでオンラインプログラムが組める
(3)入出力装置のスピードとCPUのスピード差を短縮するため,データ渡しはいったん磁気
ディスクを介して行っている(SPOOL機能)
(4)豊富なファイル編成とアクセス方法を持たせた
ファイル編成:順編成,相対編成,索引編成
アクセス方法:順次,直接,動的
(5)多様なオンラインシステムに対応するため,データ収集・分配,リモートジョブエントリ,問合せ処理が行える
(6)ジョブ制御言語によりジョブをカタログ領域に登録し,オペレータがいちいちジョブを入出力装置から投入しなくても連続実行できるようにした
TOSBAC漢字システム15用ソフトウェアMIGHTY
TOSBAC漢字システム15は,1978年に発売した.TOSBACシステム15をベースに漢字処理を行うために,ハード,ソフト両面を強化し,TOSBACシステム15の機能・性能はそのまま保持した上で,新しく漢字を取り扱えるようにした.漢字コード体系の選定では今後の漢字処理コードがJISベースになることを想定して「JIS C 6226」に準拠することとした.
MIGHTY-1に漢字処理機能を組み込み,伝票,帳票への漢字出力はもとより,CRTへの表示,漢字入りマスタファイルの作成・更新時の漢字入力などに一貫して漢字を取り扱える.漢字入力は,ブックマット方式キーボードを使用し漢字入力用のコードブックに必要な漢字を割り当てて行うようにした.