誕生と発展の歴史

コンピュータの周辺装置もコンピュータとともに大きく変化しながら発展してきた.初期のコンピュータの周辺装置としてはプリンタ,紙テープ読取装置,紙テープせん孔装置,カード読取装置,カードせん孔装置などがある.米国ではコンピュータの前にパンチカードシステム(PCS)や会計機が普及しており,コンピュータの媒体としてもカードが最初から使用されたが,我が国では紙テープが入出力媒体としてまず使用され,そのための機器が開発された.例外として,我が国最初の電子計算機FUJICや初期の富士通信機製造(現富士通)のリレー計算機FACOM 128Aなどではカードを使用している.

入力媒体としての紙テープやカードにプログラムを作り込むためには,フローチャートの記述・コーディングシートへの記入・紙テープ/カードのパンチという工程が必要であり,そのための各種の小道具が開発された.

紙テープ読取装置:
1950年代半ばまでは印刷電信機の一部として開発されてきた製品が主体で,機械的な読取装置が多く,10字/秒未満の速度であった.後半になって,機械的な装置でも60字/秒程度に読み取り速度が上昇した.光学的な装置で200字/秒のものをFerranti社が開発したが,我が国でも電電公社電気通信研究所で200字/秒のものを1958年に試作した.同年完成した日本電気のNEAC-2201に光電式テープ読取機が搭載された.沖電気も光電式テープ読取機を1958年に発表している.当時光源としては白熱電球が使用されており,ゲルマニウムトランジスタの温度上昇による特性のドリフト対策として温度コンペンセート回路が組み込まれた.1972年頃には2,000字/秒程度まで速度が向上した.
紙テープせん孔装置:
この装置も印刷電信機の一部として開発され,速度も10字/秒未満のものが普通であった.1958年に沖電気は4,000字/分(67字/秒)の高速紙テープせん孔装置を発表したが,国内各社の製品はその後も大体200字/秒止まりであった.せん孔装置の場合には1桁ごとに正確なピッチで停止させなければならないので,読取装置のような動作速度の向上が困難になる.
カード読取装置:
PCSの時代からIBMの80欄カード(角孔)とRemington Randの90欄カード(丸孔)が使われ,そのまま初期のコンピュータ入力装置として使われた.当時の読み取り機構は各欄に対応した金属ブラシと共通金属ローラの間にカードを通過させる方式で,800枚/分程度の性能であった.富士通は1959年に光電式カードリーダを完成した.光学的な読取装置の性能は1970年代に入ると2,000枚/分程度まで向上した.
カードせん孔装置:
当初はPCSから引き継がれた鍵盤カードせん孔機が使用された.その後各社で計算機用カードせん孔機が開発された.沖電気では1961年にOKITAC-5090用にせん孔速度150枚/分のOKITAC-5092カード読取せん孔装置を開発し,富士通は1962年にFACOM 222用カードせん孔機を開発した.オフラインのカードせん孔装置についてはIBM製のものが多く用いられてきたが,1967年に日立がオフラインカードせん孔機を開発した.1970年代にはせん孔速度が1960年代の約2倍向上した.