日本電気のオフコン用オペレーティングシステム

初期のオフコンのソフトウェア(1973年〜)
本格的なOSを搭載する前のオフコンとして,1973年8月発表10月出荷のNEACシステム100は初期のオフコンとして位置付けられる.主たる記憶装置としてカセット磁気テープが使われておりデータエントリィやビリング(伝票発行)などの業務が主な用途であった.COBOLライクな簡易言語が装備されており本格的な業務プログラムの作成も可能であったが,メモリ・周辺装置から来る制約があった.実装メモリが増え,主たる記憶装置としてディスクが装備されるまで,オペレーティングシステムとしては,登場してこない.当初の処理形態は,シングルジョブが主流であった.しかし,初期のオフコンから3年が経過するころから1台で多数の業務が同時に実行できるまでにCPU性能が向上し,実装メモリも増え,ディスクが装備されてくるとオペレーティングシステムとしてのかたちが見えてきた.
1977年12月発売のマルチワークシステムにおいて,ステーション(タイプライター型,ディスプレィス型)を8台まで接続し,伝票発行のような業務を最大8つ,加えてバッチ処理を1つ,合わせて9つの業務を同時に処理できるOS“OS-4”が提供された.当時はまだメモリが高価であったため,主記憶とディスク間で実行中のプログラムをRoll out/Roll inしながら少ない実装メモリで多くのプログラムを実行できていた.このマルチワークシステムで構築した技術は,次のオフコンOS “ITOS”へと引き継がれていった.

(注)以下で,ITOSは“アイトス”と読む.

ITOS(1978年〜)
オフコン用本格的オペレーティングシステム(OS)は,1978年から提供されたITOSが最初である.
対話型OSとして新しく開発したもので,対話指導型といわれている.それまで主流であったタイプライタのような操作卓からコンピュータへコマンド列で指示していたときに比べ,キーボード・CRTを使って行うように作られており,コンピュータからオペレータへの操作ガイドが表示できるようになり,操作性が大幅に向上した. 1980年2月には,全面的に日本語機能を強化した.同一のソフトウエア体系で,小規模(スタンドアロンシステム)から,中規模(端末台数が32台のような大きなシステム)までをカバーするファミリー化されたオフィスコンピュータ向けのオペレーティングシステムであった.
ITOS-4(V)(1984年〜)
リレーショナル型データベ−スITOS-RDBを搭載したOSとしてITOS-4(V)が登場した.RDBをデータの核にRDBを活用出来る機能が提供され,データベースのエンドユーザ機能としてRDB/EUFが提供された.
ITOS/NET(アイトスネット 読む)という機能で,本社・支社・支店などに設置した複数台のコンピュータ間を回線で接続し,お互いのシステム,お互いのファイルを,参照することができていた.
オフィスコンピュータが伝票発行処理といった事務部門の業務処理から,会社全体の仕事を総合的に引き受けるようになり,オフィスコンピュータの使い方が変化してきた時代であった.製品名もオフィスコンピュータから,統合OAという言葉に合うオフィスプロセッサへと変わってきたのもこのあたりからである.
ITOS-VX(1987年〜)
スタンドアロンから大規模システムまでプログラムの一貫性を維持できるOS ITOS-VXを出荷し,大規模システム向けにマルチプロセッサを採用し性能を大幅に向上した新シリーズNECシステム3100を出荷した.1988年12月にオフィスコンピュータとクライアントPCのデータ連携機能 PC-RDBサーバを強化,同年10月にネットワーク機能を強化した.
統合オフィスシステム“アラジン”が提供され,各種オフィス業務も行える環境として発展した.
A-VX(1990年〜)
ITOS-VXに,システムの性能向上,より大規模なシステムに対応できるよう強化したOSがA-VXであった.
LANマネージャサーバ機能(LM/A-VX)が提供され,NetworkOSとしてのデファクトスタンダードのLANマネージャと連携できるようになり,他のPCインテグレーションソフトとの組合せで柔軟なシステム構築が可能となった.
このLANマネージャサーバ機能は,結果として,後にWindows上でA-VX IIIを動作させる際の技術的なベースになった.
A-VX II(1993年〜)
価格性能比を向上したNECオフィスサーバシステム7200シリーズ用OSがA-VX IIであった.
システム全体の性能向上がさらに進み,さらに大規模なシステムの構築が要求されてきた.スタンドアロンタイプのNECオフィスサーバシステム7100シリーズから最上位のモデルまで16機種を揃え,最上位モデルの最大端末台数は,2,400台まで拡大した.ディスクアレイ装置を採用,ホットスタンバイ機能も提供し信頼性も向上させた.アプリケーションの高生産性を追求するため,ソフトウェア開発支援システムSEA/I,クライアント/サーバ形態のソフトウェア開発支援システム SOFPIA,IDL Toolを提供した.
A-VX のオープンプラットフォーム対応(1995年〜)
これ以降のA-VXは,オープンプラットフォームとしてWindows上で動作するOSとして提供され,オープンプラットフォーム上のいろいろなソフトウェアと連携・連動することで,さらに多様なシステムの構築が可能となっていった.
A-VX III(1995年〜)
オープンプラットフォームOS(UNIX,Windows)が普及してくる中,これらオープン系OSの機能と連携させることで,オフコンOSだけでは実現できなかったいろいろなシステムが構築できるようになった.オフィスサーバ(システム7200シリーズ)のユーザ資産を継承しつつ,Windows NTアプリケーションソフトとの連携活用が可能になった.
A-VX IV(1997年〜)
オフィスサーバ(システム7200シリーズ)の資産を継承しWindows NTアプリケーションソフトとの連携活用が可能なOSとして登場した. 1998年11月にオフィスサーバからWindowsオープンデータベース(Oracle,SQLサーバ)へデータベースの複製を作る DBレプリケーション機能を強化し,2000年7月には,従来のアプリケーションから直接Windowsオープンデータベース(Oracle,SQLサーバ)をアクセスできるOpen Data Base Access kit機能を強化した.