ITOSは,先に出荷されたNEACシステム100のオペレーティングシステムOS-1,OS-4のユーザソフトウェア資産を継承するかたちで開発され,国内初の新しい対話指導型( ITOS:Interactive Tutorial Operating System)オペレーティングシステムであった.対話指導型といわれているのは,オペレータの操作をキーボード・CRTを使って対話型で行うように作られており,それまで主流であったタイプライタのような操作卓からコンピュータへコマンド列で指示していたときに比べ,操作性が大幅に向上している.ユーティリティなどを起動した場合は,必要なパラメータをコンピュータ側から逐次問いかけてくるので,それに対し表示されている指定可能なパラメータの一覧から選択することも可能になっていた.指定されたパラメータの値によって,次に問いかける質問を変えるようなことも実現できていた.
ITOSは,1978年9月発表,翌年1月出荷のNEACシステム100/150システムに搭載された.
1980年2月には,全面的に日本語機能を強化したNEACシステム50II,100 II,150 II を出荷した.また,1981年4月に出荷したNECシステム20/25〜100/85まで5つのモデルに対して同一のソフトウェア体系で,小規模(スタンドアロンシステム)から,中規模(端末台数が32台のようなシステム)までをカバーするファミリー化されたオフィスコンピュータ向けオペレーティングシステムである.
ITOSにおいて新しく採用したアーキテクチャ,および主な特長は以下の通りである.
- (1)プログラムのリエントラント(reentrant)構造
- 小規模(スタンドアロンシステム)から,中規模までをカバーするファミリー化に対応できるように,プログラムのデータ部と複数のタスクから共有参照可能な手続き(命令コード)部をメモリ管理上分離した.このようにすることで,同じプログラムを多数起動されても最小のメモリで実行できるようになっている.
- (2)本格的日本語機能
- 日本語CRTディスプレイ,日本語プリンタ,業務用(財務会計,給与計算,販売管理,生産管理)漢字辞書ファイルを装備した.
また,プリンタについては,書式(罫線など)を印刷時に重ね合わせる書式オーバレイ機能も装備されている. - (3)COBOL言語(COBOL規格の最高水準準拠)
- 会話型デバッガ(プログラムのシンボルでデバッグ可能)も装備
- (4)SMART(Simplified data Manipulating And Reporting facility for Transaction data Processing)
- コンピュータと対話形式で画面の質問に答えていくだけでCOBOLプログラミングの知識のない人でも簡単にプログラムが作成できる事務処理用エンドユーザ向け第4世代言語を装備し,SE向けのツールとしても多用された.