【日本電気】初期のオフコンのソフトウェア

 1973年8月にNEACシステム100を発表し,10月に出荷開始した.
 このシステムでは,まだオペレーティングシステムは存在しておらず,主たる外部記憶装置のCMT(カセット磁気テープ)媒体からプログラムを主記憶に読み込むプログラムローダーが存在していた.アプリケーション開発言語としては,オフコン用に新しく開発したBEST(Beginner's Efficient & Simple Translator)が動作しており,COBOL言語に近い簡易言語で,短時間で習得が可能なように考えられていた.BESTでは,伝票発行,問合せ(更新),オンライン伝票処理(後で機能追加)の業務プログラムを作成することができていた.
初期のオフコンのソフトウェアとしては,アプリケーションプログラムを開発するためのコンパイラ・プログラム/データを操作するため幾つかのユーティリティが準備されていた.主なものは,

  • BEST(簡易言語)コンパイラ
  • ソース(原始プログラム)アップデート:現在のテキストエディタに相当
  • オブジェクトアップデート:実行形式のプロクラムを管理するユーティリティ
  • ソート(並べ替え)ユーティリティ
  • ファイル操作(コピー,印刷など)ユーティリティ
 本格的に業務処理プログラムを作成するにあたっては、事務処理用言語COBOLに対するニーズも高くなり,1974年2月 NEACシステム100 COBOLを出荷した.このCOBOLが本格的に利用されたのは,COBOLとして十分なファイル装置が実装された後継機・上位機のNEACシステム100G,H(1975年8月出荷)以降のシステムの登場からであった.


NEACシステム100 COBOL翻訳リスト

NEACシステム100 COBOL翻訳リスト

 オペレーティングシステムとしての多重処理が実装される以前に,マルチビリングシステムとして,1台のコンピュータにそれぞれ2台の伝票発行用キーボード,シリアルプリンタ,紙テープ読み取り穿孔装置を向かい合わせで装備したシステムがあった.このシステムには,BEST2M(Mはマルチビリングの意味)というBESTをマルチビリング専用に拡張した簡易言語が装備され,2つの伝票発行業務を1台のコンピュータで処理できるようにプログラミングすることができていた.
 ハードウェアとして,最初のNEACシステム100は,主記憶装置12キロバイト,CMT(カセット磁気テープ)が主たる外部記憶装置(2台),キーボード,シリアルプリンタ,紙テープ読み取り穿孔装置が実装されていた.主記憶の中には,装置を制御するマイクロプログラムも4キロバイト含まれており,ソフトウェアとして8キロバイトの領域で動作していた.シリアルプリンタは,伝票印刷用でエラー表示などはできないため,操作者とのやりとりで必要な操作指示,エラー表示をするための8桁のDigit Display(数字0〜9,英文字A〜F,ハイフン,ピリオドが表示できる)が装備されていた.この装置は,表・裏の表示切り替えができるように切り替えボタンが付けられており,切り替えることで最大18文字までの情報が表示可能であった.