日立製作所の汎用機シリーズ,HITAC Mシリーズの最上位OSで,すでに市場に出ていたVOS2の上位OSとしてVOS2からの上位方向互換性を保ちながら,大型OSに要求される機能を盛り込んだ大規模汎用オペレーティングシステムであった.
VOS3は1975年5月に発表,1977年4月から出荷を開始した.
VOS2,VOS3など,Mシリーズ全体のソフトウェアシステムは図-1に示す3つの設計目標に沿って開発した.
日立製作所の汎用機シリーズ,HITAC Mシリーズの最上位OSで,すでに市場に出ていたVOS2の上位OSとしてVOS2からの上位方向互換性を保ちながら,大型OSに要求される機能を盛り込んだ大規模汎用オペレーティングシステムであった.
VOS3は1975年5月に発表,1977年4月から出荷を開始した.
VOS2,VOS3など,Mシリーズ全体のソフトウェアシステムは図-1に示す3つの設計目標に沿って開発した.
VOS3オペレーティングシステムの特長としては,多重仮想記憶装置,マルチプロセッサ,資源集中管理機能,RASIS機能の強化,TSS処理機能の充実などがあった.また,新しい通信アクセス法VTAM(仮想通信アクセス法)をサポートしており,HITAC 8700/8800の大型OS,OS7の技術も各所に引き継いでいた.
特長 | 説明 |
---|---|
多重仮想記憶装置 |
ジョブごとにそれぞれ独立した16MBの仮想記憶装置を提供 これにより,プログラムのメモリ空間の大幅拡大を実現 |
マルチプロセッサ |
複数のCPUが主記憶装置を共用し,1つのOS下で動作 マルチプロセッサ化による性能向上とともにCPU多重化によるノーダウンシステムの実現を目指す |
資源集中管理機能 |
システム効率向上,バランスのよいサービス提供を目的として資源を集中的に管理 OSの中枢神経として,統一的な判断と制御を行う |
RASIS機能の強化 (RASIS:Reliability Availability Serviceability Integrity Security) |
チャネル障害に対する交替入出力パスによる再実行,装置障害に対する動的装置再構成,実記憶装置障害に対するページ単位の閉塞,マルチプロセサ構成での交替CPU回復機能,機能回復ルーチンによるソフトウェアRAS機能などによる信頼性,可用性の向上 的確な保守情報の提供による保守性の向上,記憶保護キーによる保全性の向上等 OS実行中に障害が発生した場合でもシステムがダウンしないよう回復機能を強化,これによりシステム安定性が向上した |
TSS処理機能の充実 |
端末からのプログラム開発や問題解決を行うために十分な機能を備えるなどマンマシンインタフェースを根本的に改善した本格的TSSを提供 各種コマンド群やエディタ等のTSSユーティリティ,BASIC他の会話型言語,構文チェッカ等を用意 |
図-2にVOS3の多重仮想記憶方式をVOS2の単一仮想記憶方式との対比で示す.
VOS3出荷開始時のハードウェアM-180では,利用できる主記憶は8メガバイトが限界であり,多重仮想記憶方式を有効に活用するには主記憶が少なく,システムのボトルネックとなることが多かった.1980年代に入り,半導体技術の進歩で利用できる主記憶容量が大幅に増大したが,VOS3では24ビットアドレッシングの制約から16メガバイトを超えるような主記憶を実装できなかった.VOS3の後継OS,VOS3/SPがサポートした実記憶拡張では64メガバイトの主記憶容量を利用できるようになり,多重仮想記憶方式の真価が発揮されるようになった.
ハードウェア,ソフトウェアを含めたトータルでのRAS階層構成を図-3に示す.ハードウェアの誤動作が発生すると1ビット誤りの自動訂正や命令/コマンドの再試行を行う.再試行に失敗するとOSに報告し,ソフトウェアの回復動作を行う.
その他,オンラインリアルタイム機能の拡充,DB/DC機能の充実,リモートバッチ処理機能の拡充等の特長があった.
データベースシステムとしては,EDOS-MSOでもサポートしていたPDM,ADMに加えて,国際標準に準拠した構造型DBとリレーショナルDBの両方をサポートし,大幅な規模の拡大,適用業務の拡大を狙ったDB/DC製品,XDMを開発した.
プログラミング言語としてはアセンブラ,COBOL,FORTRAN,PL/I,ALGOL,BASIC,RPGが利用できた.FORTRAN,PL/Iでは用途に応じて複数個の言語プロセサを用意.
その他,VOS3を構成するプログラムには,リンケージエディタ/ローダ,VSAMユティリティ,ソートマージ等のサービスプログラムがあった.
図-4にVOS3の構成を示す.
VOS3のマニュアルの表紙 | VOS3のマニュアルの記述例 |
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