【日立】 HITAC 8000シリーズ用OS

HITAC 8000シリーズは,RCA社との技術提携を基に日立製作所独自技術を加えて開発した大・中型汎用機で,OSとしてはまずPOS(Primary OS),TOS(Tape OS),TDOS(Tape Disk OS)をRCA社から導入し,その後,これらをベースにDOS,EDOS,EDOS-MSOと開発が進んだ.

POSはシステム装置もなく,SVC(Supervisor Call)も4種しかないという簡単なOSだった.TOSから6本のマルチプログラムが可能になり,TDOSでディスクがシステム装置となったが,コンパイラのワークエリア,ライブラリなどは磁気テープであった.

TDOSをベースにディスクだけで動くシステムとして自力開発したのがDOSである.DOSでは,オンライン向けOSとしてマルチタスク,リエントラントFCP(File Control Processor)をサポートした.キーインシミュレーション,IPCなど後のOSにまで引き継がれる新しい機能もサポートしており,日立のオンラインシステムの基本的構造はこの時代に確立した.

DOSベースに機能強化を図ったEDOSを1969年に発表した.EDOSには次のような特長があった.

(1)バッチ処理能力の向上
ジョブ管理を強化し,3個のジョブストリームを同時に処理できるようになり,新しく設けられた入力リーダ,出力ライタとともにバッチ処理能力が大きく向上した.
(2)すぐれたオンライン処理能力
MCP(Multi-Channel Communication Program)を通信制御に用い,管理プログラムのマルチタスク機能などとともにすぐれたオンライン処理能力を提供した.

EDOSでは,プログラミング言語としてFORTRAN,COBOL,RPG,アセンブラを用意した.また,データの分類・併合を行うソートマージプログラム,プログラム・ライブラリの保守やテープの複写等に役立つ26種類のユーティリティプログラムを用意した.

図-1にEDOSまでのOSの変遷とそれぞれの特徴を示す.TDOS以来オンラインシステムのサポートに重点を置いていたが,DOSになって本格的にサポートし,EDOS,EDOS-MSOではさらにそれを強化した.


図-1「EDOSまでのOSの変遷とそれぞれの特徴」

図-1「EDOSまでのOSの変遷とそれぞれの特徴」


EDOSの大規模システム用拡張版として開発されたのがEDOS-MSOである.EDOS-MSOはメモリが主に196KB以上の当時としての大規模システムで使われた.EDOS-MSOは1971年に発表,翌1972年から出荷を開始した.図-2にEDOS-MSOのシステム構成を示す.



図-2「EDOS-MSOのシステム構成」

図-2「EDOS-MSOのシステム構成」


EDOS-MSOは大規模バッチ,大規模オンラインおよびリモートバッチの同時処理できるように作られており,以下の特長があった.

(1)マルチステージ方式によるメモリ管理
メモリ管理にマルチステージ方式を採用しており,最大12個のジョブストリームを同時に処理できた.EDOS-MSOには,ステージのほかに,オペレータ起動のユーザプログラム,入力リーダ,出力ライタ,リモートバッチ制御用プログラム,ユーザオウンコードおよび他処理装置との共通データエリアのために各種のパーティションが設けられていた.図-3にEDOS-MSOにおける最大メモリ構成を示す.


図-3「EDOS-MSOにおける最大メモリ構成」

図-3「EDOS-MSOにおける最大メモリ構成」


(2)ディスクファイルの自動割当て
ユーティリティプログラムによって前もってファイルエリアを割り当てておかなくても,プログラム実行時に必要な大きさのエリアが確保され割り当てられた.
(3)AVR(Automatic Volume Recognition)機能
ディスクパックや磁気テープをどの装置に装着しても,管理プログラムが自動的に装置との対応を検知した.
(4)向上したオンライン処理能力
オンラインシステムでは通信管理プログラムとしてBCS(Basic Communication Support)またはMCS(Multi-Channel Communication Support)が使われ,最大64個のタスクの同時処理ができた.
(5)向上したバッチ処理能力
最大3個の入力リーダ,6個の出力ライタおよび14個のジョブを同時実行できた.
(6)マルチコンソール
2台以上のコンソール装置をそれぞれ別のオペレータが使うことにより,目的別にコンソールを使い分け,オペレータの負荷を軽減できた.
(7)障害制御機能の強化
ハードウェア検出障害,入出力動作の時間監視などのソフトウェアが検出した障害の記録をディスク記憶装置などに保存した.記録保存後,障害からの回復,回復不能部分のシステムからの切り離しが行われた.

HITAC 8000シリーズでは2種類のデータベースシステムをサポートした.EDOSには中規模DBシステム向きのネットワーク構造データベースPDMがあった.EDOS-MSOではPDMに加えて,データコミュニケーション機能を備えた大規模システム向きDB/DCシステムであるADMをサポートした.

HITAC 8000シリーズの各OSとサポートハードウェアの対応を下表に示す.HITAC 8300,8400,8500はRCA社との技術提携により最初に作られたハードウェアであった.1971年には性能,信頼性,操作性を向上したHITAC 8350,8450を開発した.

  POS/TOS
TDOS/DOS
EDOS EDOS-MSO
8300  
8400
8500
8350  
8450  
8700基本モード    

 
EDOS, EDOS-MSOのマニュアルの表紙EDOS, EDOS-MSOのマニュアルの記述例