ハードウェアの進歩により日本語化,図形処理等アプリケーションも拡大し,ますます大規模化した計算機システムに対応してVOS3を拡張したOSがVOS3/SPであった.VOS3はハードウェアバンドルの無償ソフトウェアであったが,VOS3/SPからVOS3制御プログラムの機能エンハンスを,有償のプログラムプロダクトとして提供するようにした.
VOS3/SPは下表に示す5種類のプログラムプロダクトの総称で,1982年3月から12月にかけてリリースした.これらのプロダクトはVOS3基本制御プログラムに付加する形で動作した.
名称
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リリース
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サポートCPU
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機能
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VOS3/SP0
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1982/3
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M-180
M-200H
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- 大容量ディスクのサポート
- 資源集中管理のエンハンス
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VOS3/SP1-JSS3
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1982/3
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M-180,M-200H
M-240H
M-260H
M-280H
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- 大容量ディスクのサポート
- チャネル拡張のサポート
- コンソール機能のエンハンス
- 資源集中管理のエンハンス
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VOS3/SP1-JSS4
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1982/3
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VOS3/SP2-JSS3
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1982/12
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M-180
M-200H
M-240H
M-260H
M-280H
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VOS3/SP1の機能に加え
- 実記憶拡張
- 非VIO専用ローカルページデータセットのサポート
- スケジューラのエンハンス
- JSS3, JSS4エンハンス
- SMSエンハンス
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VOS3/SP2-JSS4
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1982/12
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図-1にVOS3/SPの目的を示す.
図-1「VOS3/SPの目的」
新しいCPUとしてM-280H,M-260H,M-240Hをサポートした.
大容量ディスクとしては従来の倍の1260メガバイト容量のH-8598型ディスクをサポートした.
チャネル拡張については,従来CPUあたり16台までしか接続できなかったチャネル台数をM-280Hで32台,M-260Hでは24台まで拡張した.これにより,入出力の負荷が均一化され,システム全体の性能が向上した.
資源集中管理ではシステム資源(CPU,実記憶装置,入出力装置)のスケジューリングを効率化して,ターンアラウンド時間の保証,スループットの増大を図った.
ジョブの特性に応じて分けたグループ(例えばバッチとTSS)ごとに,実記憶装置に置くジョブの個数を制御する多重度制御を実現した.これにより,実記憶装置の負荷の安定化が図られ,ジョブのターンアラウンド時間が安定した.
各ジョブに一定の比率でCPUを割り当てるタイムスライスディスパッチング制御を実現した.オンラインのように短いレスポンスを必要とするジョブにはCPUの割当て比率を高め,優先度の低いジョブにもわずかではあるがCPUを割り当てることでジョブの沈み込みを防ぐといったことが可能となった.
ジョブのワーキングセットの大きさが一定の範囲で変動するよう制御する主記憶枠保証機能をサポートした.必要以上に小さくならないようにすることで,ターンアラウンド時間の保証が可能となる.また,必要以上に大きくならないようにすることで,他のジョブへの悪影響を防ぐことができる.