【日立】 OS7

HITAC 8700/8800 OSとして開発したOS7は,仮想空間,マルチプロセサをサポートした本格的な大型ソフトウェアシステムであり,その規模は当時としては世界的にも最高水準をいくものであった.

OS7は1970年11月発表,1972年10月から出荷を開始した.

OS7は以下のような特長を持っていた.

特長 説明
仮想記憶の採用 広いアドレススペースを利用でき,従来のオーバレイ構造の枠を超えてプログラムを組める.また広い仮想空間をコアメモリ上で実現するために高速磁気ドラムを用いたスワッピング機構を採用.
会話処理,リモートバッチ処理のサポート センタは,バッチ処理,実時間処理に加えて,会話処理とリモートバッチ処理を同時にユーザに開放できる.また,プログラム,コマンド,ユーザファイルが同一体系で構成されているため,バッチ処理の結果を会話処理で利用するなど,広範囲の融通性がある.
可用性の向上 マルチプロセッサおよびデュプレックス構成をサポートし,また各種障害への対応が考慮されている.
ジョブおよびファイルの管理機能 ジョブのスタックと能率的なスケジューリング,システム資源の効果的な使用の制御,オペレータ業務の軽減などにより,センタ運営の省力化を促進している.
また,ファイルに対する各種のアクセス法があり,カタログ機能とともにファイルの取り扱いの簡素化を実現.
リングレベルによるメモリ保護など,機密保護機構も備えている.
強力な言語プロセサ体系 高度な最適化機能を持つFORTRANコンパイラ,PL/I,COBOL,アセンブラ,会話型言語BASIC,FORTRAN構文チェッカなどがある.
使いやすいユティリティプログラム リンケージエディタ,ソートマージ,各種ライブラリ保守,ファイル保守,ボリューム保守,デバグ支援,テストデータジェネレータなどのユーティリティプログラムを完備.
端末からも,バッチジョブとしても同一体系のコマンドの中で取り扱え,処理の効率を向上させている.

 図-1にOS7のソフトウェア構成を示す.


図-1「OS7のソフトウェア構成」

図-1「OS7のソフトウェア構成」

1973年1月には,東京大学大型計算機センターでOS7を搭載したHITAC 8700/8800システムによる共同利用システムが稼働開始した.当時のセンタ運営ではジョブの受付やジョブ結果の返却は人手を介するのが通常であったが,東大大型センターではユーザがトークンカードを読み込ませてジョブ結果を取り出すオープンバッチ処理と呼ばれるデマンドプリント方式を採用した.東大のこの方式は当時としては画期的なものであった.図-2に東大大型センターでのオープンバッチの処理の手順を示す.


OS7のマニュアルの表紙OS7のマニュアルの記述例マニュアルの綴じ方
(差し替えの便のため,ビス止めになっていた)