【富士通】 OSIV/MSP(1997年エンハンス版)

阪神淡路大震災(1995年1月17日)以来,災害対策への認識が高まる中,企業の情報処理システムのバックアップセンター構築のための強化機能が,1997年3月,富士通から同社の超大型向けOSであるOSIV/MSP(1989年6月発表)の機能強化版として出荷された.

この当時,既に同社ではOS(オペーレティングシステム)の強化をV/L(バージョン・レベル)アップで図るのではなく,機能修正と同様な方法で強化ソフトウェアも提供する方法に切り替えていた.(この背景には,V/Lアップに伴う手続きの軽減に加え,メインフレームシステムに期待される機能がOSとミドルウェア層(同社の場合はAIMを代表とするようなソフトウェア群)の機能強化との連携を抜きには語れなくなって来ていた時代の影響がある.

1997年3月版で強化された災害対策機能の特徴はリアルタイムバックアップと呼ばれる機能にある.これによって,運用センターが災害にあったとき,バックアップセンターはほぼ最新の状態にあるデータを使って速やかな業務の再開が可能になる.同様な強化機能は同社の大型向けOSであるOSIV/XSPにも提供されていった.

リアルタイムバックアップの具体的な仕組みは、同社がリモートFCU(File Control Unit)と呼ぶ装置が,ほぼリアルタイムにバックアップデータをリモートサイトに転送する機能を基にしている.リモートFCUとは,RFCF(Remote File Control Facility)と呼ばれる機能が装備されたファイル制御装置のことである.1997年3月当時のリモートFCUとしてはF1710Rがあったが,その後のF6495などにも同様の機能が装備された.以下,図に則してリアルタイムバックの概要を述べる.

  • データベース等の更新ログがログファイルに書き込まれると,同時にリモートFCUが書き込まれたデータのコピーをリモートサイト(バックアップセンター等)に転送する.
  • リモートサイト側にあるリモートFCUは受け取ったデータをリモートサイトのファイルに書き込むと共に,双方のリモートFCU間で同期が取られる.これにより,元のログファイルとリモートサイトのログファイルは,あたかも両サイトに広がったひとつの仮想的なログファイルのように捉えることが出来る.
  • リモートサイト側では,受け取ったログデータを基に定期的にデータベースに更新が反映される.この機能のために同時に強化されたAIMには論理ログ(注1)対応機能が提供された.
  • (注1)データベースの物理的な位置を特定せず,データの論理的だけに依存するログの採り方.物理的に位置を特定するログよりも反映スピードは劣るが,論理ログ方式はリモートサイトのデータベースをコンパクトにするなど柔軟な対応を可能にする特徴がある.