FACOM Vシリーズは,富士通の汎用小型コンピュータシリーズで,同社の汎用コンピュータFACOM Mシリーズの下位に位置した.
同社の小型コンピュータは,かな文字COBOLが簡単に使える安価なFACOM 230-10(1965年3月発表)とオンラインプログラムが組めるFACOM 230-15(1970年4月発表)があった.すでに,FACOM 230-10の後継機として,FACOM V0が発表されていたが(1974年8月),FACOM 230-15の後継機としてFACOM Vが1977年1月に発表された.このFACOM Vは以下の特徴を有した.
- (1)小型システムとして初めて本格的な4D思想に基づいてDB(Data Base),DE(Data Entry),DU(Data Utility),DC(Data Communication)を装備
- (2)4Kビット/チップのMOS-LSIメモリの採用により主記憶の大容量化と低価格化を実現
- FACOM 230-15は磁気コアメモリを採用していたため価格的制約から最大容量が32KBであったが,FACOM Vでは最大192KBに拡大.合わせて低価格化と高信頼化を実現した.
- (3)500〜600ゲートのバイポーラLSIの採用による高速化
- (4)中大型機並みの性能・機能を低価格で実現
FACOM Vは,同時に発表されたFACOM V0III(FACOM V0のエンハンス機)およびFACOM V0SIII(FACOM V0Sのエンハンス機)と合わせFACOM Vシリーズを構成した.その後,小型コンピュータFACOM Vシリーズは,新FACOM Vシリーズ(FACOM V-830 STREAM/V-830/V-850/V-870)に置き換わり,1985年に発表されたFACOM Kシリーズ上位機によりオフィスコンピュータに統合された.
機種名 | FACOM V0SIII | FACOM V0III | FACOM V | |
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発表時期 | 1977年1月 | |||
中央処理装置 | 命令数 | 122(2進固定小数点,浮動小数点,10進固定小数点,論理演算,文字制御 など) | ||
データ形式 | バイト,半語,語,倍長語(1語=32ビット) | |||
アドレス方式 | 直接,相対,ベース,インデックス | |||
アドレス変換方式 | TLB(Translation Lookaside Buffer)による高速アドレス変換 | |||
制御方式 | マイクロプログラム制御 | |||
主記憶装置 | 記憶素子 | 4KビットMOS-LSI | ||
サイクルタイム | 670ns/2B | 600ns/4B | ||
容量 | 8〜48KB | 16〜64KB | 32〜192KB | |
エラーチェック | パリティチェック | ECC | ||
記憶保護機構 | なし | あり | ||
チャネル接続台数 | 4 | 5 | 4 | |
磁気ディスク装置 | 10MB×4台 | 40MB×8台 | ||
固定ヘッドディスク装置 | 0.5/1.0MB | 2.4MB | ||
フロッピィディスク装置 | 243KB(8インチ,片面),2台内蔵可能 | |||
通信回線数 | 1 | 16 | ||
その他 | FACOM 230-10エミュレータ機能あり | FACOM 230-15エミュレータ機能あり |
(注)上記の諸元は発表時のもので,その後の改良で変更されている場合がある.