富士通の第二世代の小型コンピュータシリーズである.従来,FACOM Vシリーズは,FACOM V,V0III,V0SIIIの3機種から構成されていたが,1979年4月から1982年7月にかけて発表された新機種FACOM V-830STREAM,FACOM V-830,FACOM V-850およびFACOM V-870の4機種により構成された新FACOM Vシリーズに置き換わった.
1979年4月に,新FACOM Vシリーズを構成する最初の機種FACOM V-830がFACOM Vの下位機として発表された.当時,小型コンピュータの目覚しい発展に伴い,その利用形態はますます多様化していた.そのため,高性能・低価格はもちろんのこと,機能の多様性・操作や設置の容易さなどが強く求められていた.オフィスコンピュータにおいても同様であった.市場は拡大していたが,競争も激化していた.一方,マイクロプロセッサやメモリ素子のように高密度LSIの出現によってハードウェアの小形化・高性能化・低価格化が実現できるようになってきた.そこで,小型コンピュータとオフィスコンピュータに共通に使用可能な16ビットLSIプロセッサFSSP(Fujitsu Small System Processor)が開発された.このプロセッサは以下の特長を有した.
- (1)1万ゲート/チップのCMOS LSIによる高性能化・低消費電力化(動作時約130mW)を実現
- (2)FACOM Vシリーズの統一アーキテクチャでかつ会話処理に強いアーキテクチャを採用
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- 将来のメモリ拡張のため余裕ある16メガバイトメモリアドレス空間
- 4つの多重実行レベルを持ち,それぞれのレベルごとに専用のワークレジスタを持たせ,実行レベルが変わった時にレジスタの退避・復元を不要にした
- (3)演算器,内部レジスタやバスにパリティチェック機能や診断機能を装備し,RAS機能を充実
FACOM V-830は,上記のLSIプロセッサ FSSPの採用を始め,チャネル制御や周辺装置の制御にも3,000〜6,000ゲートの専用LSIを開発,主記憶には16KビットRAMまたは64KビットRAMなど高集積メモリを採用し,高性能化とともに小型化・低コスト化・低消費電力化を実現した.
以後,FACOM V-830の上位機としてFACOM V-850(1980年6月発表),V-870(1982年7月発表),下位機としてFACOM V-830 STREAMが追加され,従来のFACOM V,V0III,V0SIIIからなるFACOM Vシリーズに代わり,FACOM V-830STREAM,V-830,V-850,V-870からなる新FACOM Vシリーズが形成された.
機種名 |
FACOM V-830 STREAM |
FACOM V-830 |
FACOM V-850 |
FACOM V-870 |
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発表時期 | 1982年7月 | 1979年4月 | 1980年6月 | 1982年7月 | |
中央処理装置 |
1万ゲートCMOS LSIプロセッサ FSSP |
SPU(System Processing Unit,1万ゲートCMOS LSI,FSSP)とIPU(Instruction Processing Unit,700ゲートBipolar LSI)による機能分散プロセッサ方式 | |||
主記憶装置 | 記憶素子 |
64Kビット MOS-LSI |
16Kビット/64Kビット MOS-LSI |
64Kビット MOS-LSI |
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サイクルタイム | 400ns/2B | 335ns/2B | |||
記憶容量 | 1.25〜2MB | 256/384/512KB | 最大1280KB | 2〜4MB | |
エラーチェック方式 | ECCによる1ビット誤り訂正,2ビット誤り完全検出 | ||||
内蔵固定ヘッドディスク装置 | サイズ容量/台 |
8インチ 67/106/159MB |
14インチ 40/106MB |
14インチ 106MB |
8インチ 40/67/300MB |
容量 | 134〜770MB | 40/106〜464MB | 最大780MB | 474MB〜3.77GB | |
内蔵フロッピィディスク |
片面243KB/ 両面 1.2MB 1台 |
片面243KB/両面 1.2MB 最大2台 |
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最大ワークステーション接続台数 | 16台 | 32台 | 64台 | ||
回線数 | 最大16回線 | 最大32回線 | |||
その他 |
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(注)上記の諸元は発表時のもので,その後の改良で変更されている場合がある.