【日本電気】 ACOS-6/MVX

日本電気は,1984年9月に,ACOS-6/MVX(Multiple Virtual eXtended)を発表し,1985年3月から出荷開始した.
ACOS-6/MVXは,先に出荷した大型機向けオペレーティングシステムACOS-6と一貫した思想のもとに,上位互換性を保ちつつ,機能性,拡張性,信頼性を強化した,大型,超大型機向けのオペレーティングシステムである.ACOS-6に比べ,大規模高性能マルチプロセッサシステムへの対応,仮想計算機システムへの対応などの基本システム制御を強化し,さらに,統合オフィスオートメーションに対応したメインフレームとワークステーションとを融合する基本ソフトウェア拡張機能を実現した.ACOS-6/MVXは,ACOS-6で稼動していたシステム650,システム850システム1000の上位互換OSとして搭載されたのに加え,新たに出荷されたシステム830,システム930システム2000に搭載された.

新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.

1.アーキテクチャの特長
(1)密結合型マルチプロセッサと疎結合型マルチプロセッサ
マルチプロセッサ方式には,1つのOSの制御下で複数のプロセッサが主記憶を介して結合する密結合型マルチプロセッサと,複数のOSの制御下にある複数のプロセッサをファイル記憶を介して結合する疎結合型マルチプロセッサとがある.
ACOS-6/MVXは,密結合型マルチプロセッサについては,先に出荷したACOS-6と同じく最大4プロセッサのシステムを構築できる.一方,疎結合型プロセッサについては,ACOS-6ではファイル単位に共有排他制御を行うファイル排他型疎結合システムSMS(Shared Mass Store)をサポートしてきたが,ACOS-6/MVXでは複数のOS間でデータベースを共有する場合の同時走行性能を向上させるために,排他制御のレベルをファイル単位からファイル内ブロック単位へと引き下げるとともに,複数OS間のロック制御やデッドロック検出を高速かつ高信頼に行うマルチシステム制御装置MSCP(Multi System Control Processor)を採用した.このブロック排他型疎結合システムをSMS-AF(Shared Mass Store-Advanced Functions)と呼んだ.


図-1

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(2)ホットスタンバイ型フォルトトレラントシステム
複数のホストコンピュータ間で,データベースシステムを格納したファイル装置を共有する疎結合システムSMSならびにSMS-AFシステムにおいて,オンラインデータベースならびにオンライントランザクションシステムTDS-AFにホットスタンバイ機構を搭載し,現用系のホストコンピュータもしくはそのオペレーティングシステムが障害でダウンした場合に,待機系のホストコンピュータおよびそのオペレーティングシステムでデータベースをロールバックリカバリしながらオンライン業務を即座に継続する,フォルトトレラントシステムを構築することを可能とした.


図-2

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(3)仮想計算機システム
コンピュータの利用業務が広がる中で,現行業務に影響を与えずに新規業務の開発やバージョンアップ等を行う要求に対応し,1台のホストコンピュータ上に複数の仮想的なコンピュータを生成する仮想計算機システムVMX(Virtual Machine eXtended)を,システム2000システム930の上で提供した.ホストコンピュータの上で直接的に稼働する1つの親OSと,親OS上の1つのジョブとして実行する仮想計算機モニタと,仮想計算機モニタの制御によってシミュレートされる1つまたは複数の仮想計算機と,仮想計算機の上で稼働する各々の子OSとから形成される.親OSは仮想計算機モニタのオーバヘッド影響を受けることなく動作でき,また,仮想計算機モニタに指定したリソース分配に従って親OSおよび子OS間のワークロードを独立させることができる.


図-3

図-3

2.機能の特長
(1)統合応用ソフトウェア
ホストコンピュータでのデータ処理とオフィスオートメーションなどのエンドユーザの業務自動化を融合する統合オフィスシステムを実現した.また,統合オフィスシステムを支える機能として,日本語情報処理システムJIPSを基本に,日本語文書,図形,イメージなど人間により近い形での多彩な形の情報処理を行えるようになった.
(2)統合オンラインデータベース
ACOS-6から継承性のあるネットワーク型データベースADBS(Advanced Data Base System)に加えて,リレーショナル型データベースのRIQS(Relational Information Query System),INQを提供した.これらの上に,高性能・高信頼のトランザクション処理システムTDS-AFによって高度なオンラインデータベースを構築できるようになった.
(3)人工知能向けプログラミング言語
高水準の人工知能向け言語LISP,Prologに対応した.
(4)システム運転の自動化,省力化
システム運用の自動化,省力化の要望に対応し,自動運転システムAOS(Automatic Operation System)において,運転ロジックの記述言語AOLを強化し.自動運転制御装置AOCと連携しシステムおよび周辺装置の電源投入と切断時刻の木目細かな運転制御を支援した.また,運営管理システムFIPS・ADによって,コンピュータ運営部門のシステム運営・維持業務を支援した.
(5)利用者管理
利用者管理機能UAF-AF(User Administration Facility - Advanced Function)により,ホストコンピュータのワークグループ化運用に対応して,階層化された利用者の管理と認証,利用者グループごとの資源分配と利用可能コマンドやアプリケーションの規制,データへのアクセス権限チェックを提供した.