大型のメインフレームからワークステーションやパーソナルコンピュータによる分散処理への流れを背景に,1980年代前半には米国でクライアント/サーバシステムが誕生した.1990年代後半からはUNIXサーバに加えてネットワーク機能を強化したパソコンベースのサーバも広く使われるようになり,PCサーバとして発展した.
PCサーバにはインテル社のPentium系のCPUやAMD社のOpteronなどIA-32系32ビットCPUが使用された.システムの高信頼化や保守性向上のために,ハードディスクのRAID化,ホットプラグ対応,リモート管理機能などサーバ用途に特化した機能を付加した.OSとしては,以前はノベル社のNetWare,IBM社/マイクロソフト社のOS/2 LAN Serverなどが多く使われたが,1990年代の終わりになるとLinuxやFreeBSDなどいわゆるPC-UNIXが企業用サーバとしても実用に耐えるようになり,広く用いられるようになった.
マイクロソフト社のWindows NT 3.5を搭載した国産初のサーバとしては,日本電気(以下NEC)が1994年11月にExpress5800シリーズの名称で発売した.最大4CPUまでのマルチプロセッサ構成により,高性能,大規模なシステムの構築を可能にした.このシリーズにはMIPS社仕様のRISCプロセッサR4400を用いたモデルとインテル社のPentiumプロセッサを用いたモデルがあった.
Pentium IIやPentium Proを用いたサーバは,1996年10月に富士通がミッドレンジサーバGRANPOWERとして発売した.このサーバは集中監視機能を実現するサーバ管理ツールServer Monitor Module(SMM)を標準搭載した.東芝も1996年10月にPentium Pro を搭載したGSシリーズのミッドレンジ機GS700を発表した.GS700では,電源装置の二重化,RAIDディスクの採用,サーバ監視機能の搭載,クラスタ構成によるフェイルオーバ自動切換が実現された.
PCサーバの高性能化,高速プロセッサの採用とともに,マルチプロセッサ化が進んだ.日立製作所は1995年にPentiumを 8プロセッサ搭載したハイエンドPCサーバFLORA 3100LPを発表した.1998年には,自社チップセットを用いてPentium II Xeonプロセッサの8台によるマルチプロセッシングを実現したアドバンストサーバHA8000シリーズを発表した.さらに1999年には,オールインパッケージのPCサーバHA8000-ieシリーズの第1弾として,Interstationを発表した.Interstationではインターネットサーバとして必要な機能をデスクサイドキャビネット1台にまとめ1パッケージ化した.
1998年には,NECもPentium Proを 8プロセッサ用いたExpress5800/190D Proを発売し,8プロセッサでのトランザクション処理性能で世界最高速を記録した.東芝はGSシリーズ後継のPCサーバとしてMAGNIAシリーズを1998年に発表した.また,GS700FRで採用したシステムダウンの回避技術であるSFR機能を搭載したMAGNIA7010FRを1999年に発表した, 2000年に入ると,富士通はPCサーバのブランドをPRIMERGYに統一しPentiumIIIプロセッサを搭載した新モデルを発表した.
PCサーバは1990年代前半に台数でUNIXサーバを抜き,2000年代に入って金額面でも上回った.