高度情報化社会を迎え,大型コンピュータシステムには「広域複合システム」の要となる「トータルマネージメントサーバ」としての役割が求められるようになった.仮想記憶の大きさはVOS3の16メガバイトからVOS3/ES1で2ギガバイトと拡張されたが,システム規模,ユーザデータ,ネットワーク規模が飛躍的に拡大し,2ギガバイトでも不足するようになった.M/ASAは,この2ギガバイトのアドレッシングの壁を越え,大量のデータを同時に扱える新しいアーキテクチャであり,それをサポートするOSがVOS3/ASである.VOS3/ASは1990年5月に発表,1990年9月から出荷を開始した.
VOS3/ASシステムは,オペレーティングシステムVOS3/ASとOS周辺のプロダクト群,およびデータマネージメントシステムXDM,汎用DB/DCシステムTMS-4Vを中心とするDB/DCのプロダクト群から構成される.図-1にOSを中心としたプロダクト群を示す.
図-1「VOS3/ASの構成」(1)OS
OSは新アーキテクチャサポート,多重プロセサ高性能化機能などの新機能をサポートするとともに,拡張カタログ機能,論理VTOCなどの高速アクセス機能,31ビットリンケージエディタ機能をOSの基本機能に加えた.また,OS内のデータ処理コンポーネントをまとめてDMFAF(Data Management Facility Advanced Functions)とし,統合ストレージ管理機能の構成要素として位置づけた.
(2)統合ストレージ管理:DMFISM
外部記憶装置の効率のよい管理と運用の実現のため,ストレージ管理関係のプロダクトをDMFISMとして体系化した.
図-2にVOS3/ASシステムのねらいとそれを実現する機能を示す.
図-2「VOS3/ASのねらい」
VOS3/ASには以下に示すような特長があった.
項目
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説明
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大容量メモリ利用による高性能化
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- プログラムをあらかじめ仮想記憶上にローディングしておき,ローディング要求があった時だけそれを複写し,使用する拡張プログラムローディング機能
- VSAMアクセス時にデータセットの一部を仮想記憶上に常駐化し,入出力回数を削減するVSAM高速アクセス機能
繰り返し入出力を行うデータセットに対して効果がある
- 拡張記憶(ES)を補助記憶装置として使い,外部記憶へのページング・スワッピング入出力時間を短縮
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ローカル複合プロセサシステム
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- 複数のプロセサを結合させ,スプール・データセットを共用し,自由度,信頼性の高いシステム構築を実現
- 付加プロダクトAOMPLUSにより,ローカル複合プロセサシステムを1システムイメージで運転
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多重プロセサシステム性能強化
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- 密結合マルチプロセサシステム処理方式の改良により,多重プロセサシステムの処理能力を向上
- プロセサ4台のDB/DCやTSS/バッチ処理環境での密結合マルチプロセサシステムの性能は,従来システムに対して30%から40%向上
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大規模システムの運用管理機能
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- 複合化により複雑化するシステム運用を容易にするため,システム生成の仕組みの改善,システム変更への柔軟な対応を実現
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M/ASAアーキテクチャでは,高速小容量の主記憶,それより速度は落ちるが大容量の拡張記憶(ES),さらに速度が遅く大容量の半導体記憶装置でメモリ階層を構成した.VOS3/ASではアドレス空間に加えて大容量展開のためのデータ空間,スーパー空間を持ち,データ空間ではアーキテクチャ上,これまでのアドレス空間2ギガバイトの約8,000倍の16テラバイトのアドレッシングが可能であった.スーパー空間も1つの大きさが2ギガバイトのデータ専用空間で,連続して16テラバイトまで作成できるが,OS提供の機能を利用して読み書きをした.
図-3にMシリーズのアドレッシングがVOS2の単一仮想記憶方式からVOS3の多重仮想記憶方式,M/EAアーキテクチャでの2ギガバイトへの拡張,そしてM/ASAでのデータ空間方式による16テラバイトの拡張までの変遷を示す.
図-3「Mシリーズでのアドレッシング機能の拡大」
図-4にデータ空間,スーパ空間の16テラバイトデータへのアクセス方法を示す.データ空間はアクセスレジスタにより2ギガバイトの仮想記憶を結合してアクセスし,スーパ空間は仮想記憶のウィンドウから16テラバイトをアクセスする.