1958年9月,日本電気は同社初のトランジスタ式計算機NEAC-2201を完成した.同機は,電気試験所のETL MARK IVを基本として,同所の指導の下に日本電気の金田弘,宮城嘉男らを中心に開発が進められた.構成は,計算機本体,コンソールおよび紙テープ穿孔タイプライタと光電式紙テープ読み取り機の入出力機からなっている.ゲルマニウム合金型高速トランジスタを回路素子とし,磁気ドラムを内部記憶装置に使用したもので,完全に国産部品によって製作された点に特長があった.また,トランジスタを採用することで,本体は,幅,奥行ともに1.1メートル,高さ1.6メートルの大きさで,当時,人々が瞠目するほどの小型化を実現していた.この計算機は事務用として開発され,10進10桁を1語とする10進法を採用し,アドレスも10進法がとられた.記憶装置には北辰電機の磁気ドラムを使用した.記憶容量は1,040語で,そのうちの40語分は1周上に5回同じ内容を記憶し,アクセス時間を短縮した高速アクセス記憶を実現した.
同機は1958年9月に完成し,電子工業振興協会の電子計算センタに設置・利用された.また,1959年6月にパリで開催されたオートマス(AUTOMATH:ユネスコ主催の情報処理国際会議)の展示会にも出品され,トランジスタコンピュータとして世界で初めての実演展示となった.他国からもトランジスタコンピュータの出品はあったが実際に動いたのはNEAC-2201だけであった.しかも, NEAC-2201は,当時の主力機種であった真空管式のIBM650より,小型なうえ高性能であった.
NEAC-2201 | |
---|---|
完成時期 |
1958年9月 |
演算方式 |
10進法,直列,1-2-4-8コード 固定小数点 |
演算素子 |
トランジスタ 600本 ゲルマニウムダイオード 7,500本 真空管 100本 |
語の構成 |
語長:10進10桁 数値語:固定小数点 符号+9桁 指令語:操作部2桁 +インデックスレジスタ指定部1桁 +アドレス4桁 文字語:5文字 |
指令(命令) |
1・1/2アドレス方式,63種 |
演算速度 |
呼出時間を含む平均値 加減算 5.2ms(1.2ms) 乗 算 9.7ms(5.7ms) 除 算 14.1ms(10.1ms) ( )内は磁気ドラムが高速アクセスの場合 |
内部記憶装置 | 磁気ドラム 1,000語(2.5ms) + 40語(0.5ms) |
入出力装置 |
光電式テープ読取機 テープ穿孔タイプライタ |