【富士通】CSP/F1, CSP/F3, CSP/F5, CSP/FX (FACOM Kシリーズ用OS)

 CSP(Customer oriented System Products)は,FACOM Kシリーズ用に開発されたOS(オペレーティングシステム)であり,富士通とユーザック電子工業(後のPFU)の協力で開発された.1984年5月にCSP/F1,F3が発表され,1985年5月にCSP/F5が発表された.さらに,1988年10月には,CSP/F3とCSP/F5を統合したCSP/FXが発表された.
 CSPは,CPS80FACOM System80シリーズ用のOS)とUNIOSFACOM Vシリーズ用のOS)を統合的に継承する位置づけのOSであり,ユーザソフトウェア資産の継承や既存オフコンとの連携性が確保された.
 FACOM Kシリーズは,ワークステーションとしての用途にも応えられる超小型のK-10シリーズから,大型オフコンであるK-200シリーズまで幅広いカバーレンジを有していた.そのOSであるCSPも用途や規模に応じた構成をとり,小さい方からCSP/F1,F3,F5のラインアップが用意された.

1. CSP/F1,CSP/F3,CSP/F5

 CSP/F1,F3,F5のソフトウェア体系を表-1に示す.FACOM Kシリーズの最大の特徴は,スタンドアロン機能と上位機のワークステーションとしての機能を備えたFACOM K-10(およびその後継機)にあった.それを支えるOSがCSP/F1であった.FACOM Kシリーズは,最下位機のFACOM K-10から手軽にオフコンシステムを導入し,業務や用途の拡大に沿って,FACOM K-10をワークステーションとする分散処理へとオフコンシステムを拡大できる拡張性を提供した.同社ではこのコンセプトを,「小さく入れてどんどん大きく」と表現した.この拡張性を支えたのが連携機能(ファイルサーバ機能)のFSERVプロトコルであった.

表-1 CSP/F1,CSP/F3,CSP/F5のソフトウェア体系
適用機種 大分類 中分類 OS種 構成機能名
FACOM K-200系,K-200R系,K-300R系 システムプログラム 基本SCP
CSP/F5
CSP/F3
ワークステーション制御,資源管理,機密保護,
データ管理,ジョブ管理,スプール,自動運転
データベース CSP/F5
CPS/F3
RDM(*1)
連携機能 CSP/F5
CSP/F3
FSERV(*2),KLINK(*3)
その他のユーティリティ CSP/F5 CL(*4),CG,ファイル管理ユーティリティ
CSP/F3 JCL,CG,ファイル管理ユーティリティ
ネットワークプログラム 手順 CSP/F5
CSP/F3
HDLC,SDLC,BSC,全銀,JCA,DT9611,CAFIS
ワークステーションエミュレーション CSP/F5 DSC(*5),KDSC(*6)
CSP/F3 TSP6650,TSP3270K
ファイル伝送 CSP/F5 HICS(*7),DTS(*8),FTU,RJE(*9)
CSP/F3 HICS,FTR,TSP3740
その他 CSP/F5 CORDEX(*10),HSO/DP(*11),DWS
CSP/F3 FBANK
オフィスサーバ WS/ホスト連携 CSP/F5 コミュニケーションサービス,プリントサービス,
メールサービス,データ連携サービス,CJMS(*12),DRMS(*13)
OA/DPプログラム OAプログラム CSP/F5 GRS,IDSP,ADSP
DPプログラム CSP/F5 DHS(*14),QWE(*15)
応用プログラム開発プログラム 言語 CSP/F5 COBOL G,FORTRAN,SSL2
CSP/F3 COBOL G, CAPG(*17)
開発ツール CSP/F5 BFG(*18),FDGL,MFG(*19)
CSP/F3 BFG,FDE2,FMTGEN
FACOM
K-10,
K10R
システムプログラム 基本SCP CSP/F1 データ管理,ジョブ管理,スプール
連携 FSERV
その他 JCL,CG,ファイル管理ユーティリティ
ネットワークプログラム 手順 HDLC,SDLC,BSC,RS-232C,FTS
ワークステーションエミュレーション TSP6650,TSP3270K
ファイル伝送 HICS,TSP3270
その他 CAPTAIN,TSPDB,FAXMANAGER,ANSWER,HSP3589
OA/DPプログラム OAプログラム EPOWORD,EPOCALC,EPOGRAPH,EPODRAW,
EPOCABINET,EPOMAIL,イメージ処理
DPプログラム EPOLOOK
応用プログラム開発プログラム 言語 COBOL G
高生産性ツール CAPE(*20),YPS(*21)
開発ツール EDITORK,FILE,FORM,デバッグ

(*1) RDM: Relational Database Manager
リレーショナル型データベース.ISAM (索引順編成)との整合性が配慮されていた
(*2) FSERV ホスト/ワークステーション間の垂直連携
(*3) KLINK ホスト/ホスト間の水平連携
(*4) CL: Control Language 翻訳型の制御言語
(*5) DSC: Data Stream Compatibility 相手ホストに対して端末のエミュレーションを行う
(*6) KDSC: K series Data Stream Compatibility  Kシリーズ機同士において,一方のKシリーズ機に繋がる端末を相手のKシリーズ機のワークステーションとして機能させる
(*7) HICS: Hierarchical Information Control System ホスト間でバッチデータ伝送を行う
(*8) DTS: Data Transfer Service ホスト間でデータ転送するための基盤ソフトウェア. 実際の転送は下位層のHICSやFTPを使用
(*9) RJE: Remote Job Entry リモートジョブエントリを行うためのソフトウェア
(*10) CORDEX: 業界標準(全銀手順やJCA手順等)をサポートした,企業間データ交換ソフトウェア
(*11) HSO/DP FNA (Fujitsu Network Architecture)ネットワーク上のワークステーションからオフコンサーバを監視する機能
(*12) CJMS: Computer Network Job Management System DTS上で動作するジョブ転送ソフトウェア
(*13) DRMS: Distributed Resource Management Support オフコン資源(ユーザ資源/システム資源)や端末資源をホストシステムで集中管理し,遠隔地からのシステム保守を行うソフトウェア
(*14) DHS ファイルを管理/保守するためのプログラムをワークステーション簡単に作成するためのソフトウェア
(*15) QWE データベースを検索し,帳票を作成するためのプログラムを簡単に作成するための対話型ソフトウェア
(*16) IREP3: Interactive Reporter 3 対話形式簡易レポートソフトウェア
(*17) CAPG 業務開発用簡易言語
(*18) BFG フォームオーバレイのためのパターンを作成するソフトウェア
(*19) MFG 対話型でディスプレイ画面や帳票のメッセージ定義体を作成するツール
(*20) CAPE: Customer’s Application Program generator 事務処理プログラムの開発生産性を高めるソフトウェア
(*21) YPS YAC II(富士通独自)と呼ばれる構造化表記法によるプログラム開発ソフトウェア

 表-1に示すように,CSP/F1,F3,F5は,互いに連携し分散処理を行うためのFSERVプロトコルや共通言語としてのCOBOL G等,多くの共通機能を提供すると同時に,CPS80UNIOSからの互換性を保つ機能を提供した.また,応用プログラムの生産性を高めるツールとして,CPS80UNIOSでの取り組みを発展させたCASET(Computer Aided Software Engineering Tool) が提供された.CASETは次の製品で構成されていた.

  • CAPE: 処理定義用ツール
  • FILE:ファイル定義用ツール
  • FORM: 画面,帳票の定義ツール

 次に個々のOSの特徴について述べる.
 CSP/F3,F5は図-1に示す多様なシステム形態を可能にした.CSP/F3はホストシステムおよびクラスタシステムのためのOSであり,CSP/F5はホストシステム,クラスタシステムに加え,オフィスサーバシステムの構築を可能にするOSであった.そのため,CSP/F5はオフィスサーバ関連機能として,富士通のメインフレームであるFACOM Mシリーズと連携するためのDRMSやCJMS等を提供した.


図-1 CSP/F3,CSP/F5のシステム適用形態

図-1 CSP/F3,CSP/F5のシステム適用形態

 一方,CSP/F1は超小型のオフコンとしての機能と同時にCSP/F3およびCSP/F5のワークステーションとしても使える機能を提供した.CSP/F1のワークステーションとしての用途を特徴付けた機能として,富士通の標準OAパッケージとして提供されたEPOCファミリがあった.EPOCファミリには日本語文書処理を行うEPOWORD,ビジネスグラフ処理を行うEPOGRAPH,電子表計算処理を行うEPOCALC等があった.

2. CSP/FX

 CSP/FXは,1988年10月に発表されたFACOM K-600シリーズ用のOSであり,FACOM K-600シリーズが採用した対称型マルチプロセッサに対応したOSであった.FACOM K-600シリーズに続くFACOM K-600SiシリーズにもCSP/FXが搭載された.CSP/FXは,機能的に高い共通性を求められていたCSP/F3とF5をCSP/F5をベースに統合したOSであった.具体的には,COBOL GやIREPで作成され,CSP/F3上で動作していた応用プログラムを,そのまま(バイナリ互換を保って)CSP/F5の上で動作させる機能拡張がなされた.こうして開発されたCSP/FXは,表-2に示すとおり,従来のCSP/F3,F5の機能(表-1参照)を包含して提供された.

表-2 CSP/FXのソフトウェア体系(CSP/F3,F5から継承された機能を含む)
適用機種 大分類 中分類 OS種 構成機能名
FACOM
K-600系,
FUJITSU
K-600Si系,
システムプログラム 基本SCP
CSP/FX
ワークステーション制御,資源管理,機密保護,データ管理,ジョブ管理,スプール,自動運転
データベース RDM
連携機能 FSERV,KLINK
その他のユーティリティ CL,CG,ファイル管理ユーティリティ
ネットワークプログラム 手順 HDLC,SDLC,BSC,全銀,JCA,DT9611,CAFIS
ワークステーションエミュレーション DSC,XDSC,TSP6650,TSP3270K
ファイル伝送 HICS,DTS,FTU,RJE,FTR,TSP3740
その他 CORDEX,HSO/DP,DWS,FBANK
オフィスサーバ WS/ホスト連携 コミュニケーションサービス,プリントサービス,メールサービス,データ連携サービス,CJMS,DRMS
OA/DPプログラム OAプログラム GRS,IDSP,ADSP
DPプログラム DHS,QWE,IDEA,IREP3,DPS
応用プログラム開発プログラム 言語 COBOL G,FORTRAN,SSL2
開発ツール BFG,FDGL,MFG,FDE2,FMTGEN

 CSP/FXでは,前述のようにCSP/F3,F5を継承するだけでなく,時代背景を反映した次のような新たな機能強化が図られた.

(1) マルチベンダ,オープン環境への対応
  • TCP/IP,RDA ,OSI (MHS,FTAM)といった国際標準への対応.リレーショナルデータベースの標準規約であるSQLを処理するFX-RDB/FX-SQLプロセッサが提供された.FX-RDBはリレーショナルデータベース管理の基本エンジンであり,FX-SQLプロセッサがSQL機能を提供した.
  • PC上のISVソフトウェア(Lotus 1-2-3,dBASE III,Excel等)との連携機能
(2) GUI(グラフィカルユーザインタフェース)環境
  • FACOM K-600シリーズとともに提供された卓上型のFACOM K-100シリーズでのGUI操作機能に加え, CSP/FX上の応用プログラムからマルチウィンドウ,プルダウンメニュー,背景色の制御等の機能を利用するためのK-Windows機能が提供された.

 
カタログ:FACOM Kシリーズ Rモデル CSP/F5マニュアル:CSP/FX システム説明書