【富士通】UNIOS/F1,UNIOS/F2,UNIOS/F4,UNIOS/F5 (FACOM Vシリーズ用OS)

  UNIOSは,富士通,ユーザック電子工業(後のPFU)および内田洋行の協力によって開発されたFACOM VシリーズのためのOS(オペレーティングシステム)であり, FACOM 230-15 SPIRALの技術にUSACシリーズの基本ソフトウェアの経験や技術を加えて開発された.オフコンとしての用途に応じて3種のUNIOSが用意された.小規模向けのUNIOS/F1,中規模向けのUNIOS/F2,大規模向けのUNIOS/F4である.最初にUNIOS/F1が1974年8月に発表された.後にUNIOS/F4を強化したUNIOS/F5が提供された.各OSの発表時期あるいは出荷時期を表-1に,各OSの代表的な適用機種を表-2に示す.

表-1 UNIOSの各OSの発表時期
OS種 UNIOS/F1 UNIOS/F2 UNIOS/F4 UNIOS/F5
発表/出荷時期 発表:1974年8月 発表:1977年1月 発表:1977年1月
強化版発表:1979年4月
出荷:1982年3月

表-2 UNIOSの各OSの代表的な適用機種
OS種 UNIOS/F1 UNIOS/F2 UNIOS/F4 UNIOS/F5
代表的な適用機種 FACOM V0 FACOM V0III
FACOM V0SIII
FACOM V
FACOM V-830
 
FACOM V-850
  FACOM V-870
FACOM V830 STREAM

  当時のオフコンに求められていた用途を踏まえ,UNIOSは次に示す4D思想に基づいて開発された.

(1)DC : Data Communication
 UNIOSを介して,ホストや端末装置を含めた自在なネットワークシステムを容易に構築可能とする.
(2)DB : Data Base
 情報の一元管理のために,小型機向けの使いやすいコンパクトなデータベース機能を装備する.
(3)DE : Data Entry
 業務現場で重要な正確なデータ投入のために,容易なデータ作成,および作成されたデータの容易なコンピュータへの入力を可能にする.
(4)DU : Data Utility
 コンピュータ利用を容易にし,利用者のソフトウェア資源を豊富にするためのソフトウェア群を用意する.そのために揃えられた代表的なソフトウェアが,ユーザプログラムの開発期間を短縮し,開発コストを軽減する簡易言語(TASKFORCE),業種/業務別の事例やノウハウを集大成したパッケージであるCAPSEL (Customer Applications Service Library),アプリケーションライブラリ(APPLY)である.

1. UNIOS/F1,UNIOS/F2,UNIOS/F4

 UNIOSのラインアップの基本形は1974年から1977年にかけて登場したUNIOS/F1,F2,F4にあった.オフコンとして小型から大型までの適用領域に合わせて構成されていた.表-3はこれら3つのOS (UNIOS/F1,F2,F4)の特徴を比較したものである.後に登場したUNIOS/F5はUNIOS/F4の継承OSである.

表-3 UNIOS/F1, F2, F4の適用ハードウェア環境と特徴的な機能装備
OS種 UNIOS/F1 UNIOS/F2 UNIOS/F4
代表適用機種 FACOM V0III,V0SIII FACOM V
主記憶サイズ 8〜48KB 16〜64KB 32〜192KB
仮想記憶サイズ 256KB〜 256KB〜 2MB〜
モニタレジデント 2.5KB 7KB 15KB
コンソール コンソールパネル
タイプライタ装置
ディスプレイ装置
(480字)
ディスプレイ装置
(480字)
多重処理 1 2
(例)バッチ + インライン(注1)
4
(例) バッチ×2 + オンライン + JES(*1)
オンラインサポート FF(*2),RJE(*3)
(注1) SOM1(*4)
データベース   DBM(*5)
データエントリ DES(*6)
処理プログラム TASKFORCE(*7), COBOL, FORTRAN
FASP(*8)
SORT/MERGE,LIBE/LIED(*9),
SYSGEN(*10),各種ユーティリティ

*1.JES : Job Entry Subsystem
*2.FF : File to File
*3.RJE : Remote Job Entry
*4.SOM1: Standard Online Module 1
*5.DBM : Data Base Manager
*6.DES : Data Entry Subsystem
*7.TASKFORCE : 事務処理パターンを基にした簡易言語
*8. FASP : FACOM Automatic Symbolic Program (アセンブラ言語)
*9.LIBE/LIED : Library Editor / Linkage Editor
*10.SYSGEN : System Generator
(注1)インライン端末については,SOM1と同等な機能を持たせていた.
インラインとは構内(インハウス)ケーブルを使用するオンラインのこと.

 UNIOSは仮想記憶方式を採用し,業務プログラムの大型化に備えるとともに, 3つのOS(UNIOS/F1,F2,F4)の間には次の互換性が保証されていた.

  • UNIOSが提供する処理プログラムはどのOSの下でも実行できた
  • 制御文,ソースプログラムとオブジェクトプログラムは,3つのどのOSの下でも相互利用できた.

 UNIOS/F1,F2,F4の大きな相違は実行多重度能力にあった.UNIOS/F1は単一処理,UNIOS/F2は2多重処理,UNIOS/F4は4多重処理の能力を有した(図-1参照).


図-1 UNIOSの各OSと多重動作の例

図-1 UNIOSの各OSと多重動作の例

   以下,UNIOS/F1,F2,F4のそれぞれの特徴的用途とそれに関連する機能を概説する.

(1) UNIOS/F1
同時には単一処理しかできないが,バッチ処理,ビリング処理,データエントリ処理およびオンライン処理といった幅広い適用分野をカバーしたOSであった.簡易性を狙いとした次のような機能はUNIOS/F1の用途に適したものであった.
  • 簡単にプログラムするための簡易言語TASKFORCE
  • コンソール・タイプライタ装置を用いた会話形式の操作やコンソールパネルだけで運用するワンタッチ操作など.

(2) UNIOS/F2
オフィスのデータ・ステーション・システムとしての用途を考慮したOSであった.UNIOS/F2を搭載したオフコンにインライン(構内オンライン)接続されたビリングタイプライタ装置あるいはディスプレイ装置を,一般の事務員があたかも個人に専用のオフコンが割り当てられたかのごとく使用できた.これはUNIOS/F2の代表的な使われ方であった.

(3) UNIOS/F4
FACOM Vシリーズの大型機向けOSとして,仮想記憶方式を活かした4多重処理能力が大きな特徴であり,それを活かして,多様な利用形態を可能にした.たとえば,バッチジョブの並列実行を含めた,効果的な多重処理を可能にした.バッチジョブの並列実行のためには,スケジュールに沿ったジョブ群の自動起動を可能にする機能が必要になるが,UNIOS/F4が提供したJES機能は,従来からのスプール機能に加え,ジョブ制御文や補助制御文(SORTなどのパラメータ等)も入力できる機能を加えることで,ジョブ群のスケジュールに合わせた自動起動を可能にした.

2. UNIOS/F4エンハンスとUNIOS/F5

 UNIOS/F4は,1979年4月発表のFACOM V-830に合わせて,大幅な機能強化が図られた.FACOM V-830は,FACOM V830STREAM,V-850,V-870とともに新Vシリーズと呼ばれた.UNIOS/F4強化の主要な狙いは,従来コンピュータ専任の要員が行っていた定常的な定形バッチ処理を,第一線の実務者(エンドユーザ)の問題解決に即応するためのワークステーション(*)処理に変貌させることであった.それに関連する主要な機能強化は次のとおりである.

(*) 当時のワークステーションという用語は,エンドユーザサイドの業務用端末群を意味した.特にディスプレイ端末はその代表的な端末であった.

(1) DCM(Data Communication Manager)
ワークステーションを管理する機能であり,UNIOS/F4の基本制御プログラムと一体になって動作する.次の機能が用意された.
  • 多重サブタスク制御
    ジョブの多重処理とは別に,DCMが提供するサブタスク機能は,応用プログラムを同時に複数の実行を可能にし,CPUの利用効率を高めた.
  • メッセージファイルインタフェース
    順編成ファイルをアクセスする場合と同様なインタフェースでワークステーションを扱うことで,ワークステーションとオフコンとの間でメッセージ交換ができる機能であり,ワークステーションと連携する応用プログラムの開発を容易にした.
  • メッセージ編集機能
    メッセージ定義体に従ってワークステーションへの表示や印刷を制御する機能.これにより,表示や印刷を応用プログラムの記述から切り離して指定することが可能となり,ワークステーションと連携する応用プログラムの開発を容易にした.
  • 運用機能
    ワークステーション環境でのシステム運転を行うためのDCMコマンドが提供された.それらは,利用者の運用形態に合わせられるように,次の三様な投入方法が用意された.すなわち,センタコンソールからの投入,ワークステーションからの投入,応用プログラムからの投入である.

(2) DES II(Data Entry Subsystem II)
 ワークステーション環境の定常業務で使用する応用プログラムをエンドユーザが簡単に作成でき,業務変更にも柔軟に修正できる機能である.メニュー画面を用いてガイダンスに沿って応用プログラムを作成することができた.

(3) DRS(Data Retrieval and Reporting Subsystem)
 単発的な帳票作成やファイル照会などの非定常業務に対し,エンドユーザを含め,誰でも簡単に即応できることを狙いとした機能である.帳票や画面の自動編集機能,入力ファイルからの条件に即したデータ抽出機能,データの分類,演算および集計機能設計が用意されていた.

(4) 日本語処理 JEF(Japanese processing Extended Feature)
 JEFは,1979年4月に富士通から発表された日本語情報システムである.これは,従来の漢字処理には必要とされた専用システムに代わり,汎用のシステムにて日本語を処理できるようにする体系の総称である.FACOM V-830はJEF体系の下に位置づけるべく開発され,UNIOS/F4のエンハンスにて,大幅に日本語処理機能が取り込まれた.すなわち,ディスプレイ端末で日本語入力を可能としたJEDITOR,COBOLでの日本語データの処理やユーティリティによるさまざまな日本語字種へのきめ細かい対応を可能にした.

  以上述べた機能以外にも,UNIOS/F4エンハンスでは多くの機能アップが図られた.たとえば,ネットワーク型のデータベース管理システムであるDBM (Data Base Manager)やDCMの下でのFNA(Fujitsu Network Architecture)に沿った機能強化等があった.FNA関連の機能強化にはホスト機としてのメインフレームとの情報交換能力を高めるHICS(Hierarchical Information Control System),リモートバッチのためのRJE II(Remote Job Entry II), ワークステーションとホスト機の間にあって中継機能を提供するDSC(Data Stream Compatibility)があった.

 UNIOS/F4エンハンスは,ワークステーション側での処理に重点を移し始めたオフコンの利用環境の潮流に沿ってなされたものであり,その潮流はますます大きなものとなっていた.それに応えるために提供されたのが,1982年3月に出荷されたUNIOS/F5であった.すなわち,UNIOS/F5は,UNIOS/F4エンハンスの狙いを根本から徹底させ,性能強化による実効的な接続端末数の拡大など,大型オフコンとしての実用性を向上させた.UNIOS/F5の主要な機能強化は次のとおりである.

  • DCMがOSの基本制御プログラムに合体され,ネットワーク環境への適合力を高めた
  • 処理タスク数の拡大(4多重→256多重).およびそれに伴う実効端末数の拡大
  • 日本語適用範囲の拡大(応用プログラムだけでなく,システムレベルでの日本語利用)
  • 利用者がコマンドをプログラム化して利用できる制御言語CL(Control Language)の提供

 また,UNIOS/F5ではリレーショナル型のデータベース管理システムであるRDM(Relational Database Manager)が1983年8月に出荷されたのも時代の流れを表している.