USAC 5010およびUSAC 3010はウノケ電子(1969年にユーザック電子工業と社名を変更,後のPFU)によって開発され,1961年に完成した.後にオフコンと呼ばれるカテゴリのコンピュータがカバーした用途を目指した超小型コンピュータであった.そこには,まだ明確なOS(オペレーティングシステム)の概念はなかったが,次のような,基本的なソフトウェアと後のオフコンに通ずる使いやすさを指向したいくつかの機能が用意されていた.
- ストアードプログラム方式
- シンボル命令を備えた機械語
- 応用プログラムを個々に動作させて使用
- フレキソライタと呼ばれる万能入出力装置を提供:プログラムのブート,実行や停止を制御できた
- コンソールパネルにハードウェアによるCPU監視,制御機能を装備
その後,USAC 1010,1020やビリングマシン(伝票発行等の電子作票計算機)としての特徴を鮮明にしたUSAC 500からUSAC1500等が続き,同一アーキテクチャに基づくシリーズ化を図ったUSAC 720シリーズが開発され,その最初の機種USAC 720/10は1971年9月に完成された.USAC 720シリーズはオフコンとしての用途を配慮して,ソフトウェアを含めて体系化された次の5つの処理モデルを用意していた.
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- (1)DDPS(Direct Data Processing System): ビリング(伝票発行)機能を超小型機に導入
- (2)マグレンジャーシステム: 磁気元帳機能処理
- (3)マルチビリングシステム: 異種伝票の同時処理
- (4)オンラインターミナルシステム: データ集配信
- (5)バッチシステム: 一括データ処理
また,基本ソフトウェアに名称はなかったが,OSに相当する機能に加え,ビリング処理向けの言語等,次の機能を有する基本ソフトウェアが提供された.
- プログラムロード機能
- 入出力制御およびデータの編集を行うサブルーチンIOCS
- アセンブラ言語
- ビリング処理用簡易言語SIMPL(Symbolic Information Management Program Language).後にBOL(Billing Oriented Language)が追加された.
- システムユーティリティ
- サービスユーティリティ(ソート,マージ,ファイルメンテナンス)
これらのオフコン特有の考え方や機能は,FACOM 230-15用のSPIRALの技術とともに,後にユーザック電子工業,内田洋行,富士通が共同開発したFACOM VシリーズやFACOM Bm(USAC 820)へと活かされていった.