AT互換アーキテクチャ(注1)を採用した,富士通パソコンの新シリーズ.1993年10月に発表された.同社のパソコンはそれまで独自アーキテクチャのFM Rシリーズとして知られて来たが,この発表以降,AT互換機であるFMVシリーズが同社のメインブランドになっていった.
- (注1)AT互換アーキテクチャ: 1984年に発売されたIBM社のPC/ATに由来するアーキテクチャ.オープンであることから世界中で採用され,パソコン規格の事実上の業界標準になった.このアーキテクチャに準ずるパソコンはAT互換機と呼ばれる.
1993年10月に発表されたのは,その初代機であるデスクトップ/ノート各3機種である.デスクトップ機はFMV-425D,FMV-433D,FMV466D.ノート機はFMV-425N,FMV-425N/T1,FMV-433N/T2である.これらのFMVシリーズ初代機はビジネス用途が中心であったが、1994年には個人向けに特化したFMV-DESKPOWERシリーズが発売され,ビジネス向けから個人向けまで幅広くモデル展開がなされた.当初併売されていた従来機種のFM Rシリーズは後に終息した.
当時,日本語処理がOS上で可能になったことから割安なパソコンとしてAT互換機が徐々に浸透しつつあったが,新規参入メーカーが中心だったこともあり,アフターサポート面を不安視する企業ユーザの姿勢などから,国内では従来どおりメーカー独自アーキテクチャのパソコンが主流を占めていた.その中で国内大手のコンピュータメーカーである同社からAT互換機であるFMVシリーズが提供されたことで,それ以降,AT互換機の普及が加速されて行った.
モデル名 | FMV-425D | FMV-433D | FMV-466D |
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発表時期 | 1993年10月 | ||
CPU | i486SX 25MHz |
i486DX 33MHz |
i486DX2 66MHz |
オーバードライブプロセッサ(*1)によるアップグレードが可能 | |||
メモリ | 4MB | 4MB | 4MB |
HDD | 0 / 170MB / 340MB | 0 / 170MB / 340MB | 0 / 170MB / 340MB |
OS | Windows3.1, DOS/V | Windows3.1, DOS/V | Windows3.1, DOS/V |
その他 |
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モデル名 | FMV-425N | FMV-425N/T1 | FMV-433N/T2 |
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発表時期 | 1993年10月 | ||
CPU | i486SX 25MHz |
i486DX 33MHz |
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内蔵 ディスプレイ |
9.4インチ STNモノクロ |
8.4インチ TFTカラー |
10.4インチ TFTカラー |
メモリ | 4MB | 4MB | 4MB |
HDD | 0 / 85MB / 170MB | 0 / 85MB / 170MB | 170MB / 250MB |
OS | Windows3.1, DOS/V | Windows3.1, DOS/V | Windows3.1, DOS/V |
その他 |
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- (*1) オーバドライブプロセッサは,上位または次世代CPUへとグレードアップするための別売プロセッサ.
- (*2) OA機器の省エネルギー化を目的とした国際的なラベリング制度.米国環境保護庁(EPA)が定めた基準値をクリアすることで専用ロゴを使用できる.日本での制度運営は1995年からであるが,本機では米国での推進制度に参加した.
- (*3) ISA (Industrial Standard Architecture)バスは, IBMのPC/ATで採用されたデータ伝送バスの規格をベースにした,IEEEのバス標準規格.
- (*4) VLバスは,米国PC用周辺機器メーカーの業界団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)が策定した,グラフィックス処理高速化カード(アクセラレーター)搭載用の伝送バス規格
- (*5) OADG(Open Architecture Developer's Group)は,国内でのAT互換機の普及を目的とした業界団体.PCメーカーをはじめ,周辺機器メーカーやソフトメーカーが多数参加.本協会で仕様統一されたキーボード配列は,現在のPCにおいても基本的に継承されている.