FACOM 6421は,直径10.5インチの小径媒体を世界で最初に採用した富士通の磁気ディスク装置で,1981年10月に完成した.
本磁気ディスク装置は,同社の長年にわたって培ってきた技術を結集して,媒体,ヘッド,ヘッド位置決め機構,およびスピンドル駆動機構など全てを小型化するとともに,一体化した革新的なDE (Disk Enclosure)構造を採用した.この構造は,磁気ディスクの設計思想を変革し,世界にインパクトを与えた.本装置は,以下の特長を有した.
- 1) 面記録密度を大幅に増大(同社 従来比 2.8倍)させ,装置当り1.78ギガバイト(446メガバイトのDEを4台搭載)の大容量記憶を実現
- 2) 1.859メガバイト毎秒の高速データ転送と高速アクセスを実現(平均ポジショニング時間:18ミリ秒,平均回転待ち時間:7.6ミリ秒)
- 3) 小形DE(Disk Enclosure)構造の採用によりヘッド/媒体部は従来装置以上に完全密閉となり高信頼化を実現
FACOM 6421磁気ディスク装置には,磁気ディスク制御装置との接続のためのアダプタを1個搭載するA形,2個搭載するC形およびアダプタを搭載しないB形の3種類のタイプがあった.
さらに3種のタイプに固定ヘッドを有するA4F,B4F,C4F形があった.固定ヘッドは,ヘッドのポジショニング時間をゼロとし,回転待ち時間のみでデータへのアクセスを可能とするもので,ディスクボリュームの一部を高速磁気ドラム的に使用することができた.
また,本装置にはネイティブモードと従来の磁気ディスク装置FACOM 493からの移行を容易にするFACOM 493互換モードの二つの動作モードがあった.
FACOM 6421A4/B4/C4,A4F/B4F/C4F | |||
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完成時期 | 1981年10月 | ||
動作モード | ネイティブモード | FACOM 493互換モード | |
ディスク | 記憶容量 | 446 MB | 317.5 MB |
トラック容量 | 26,793 byte | 19,069 byte | |
シリンダ数 | 833 + 7(交代) + 1(CE) | 555 + 5(交代) + 1(CE) | |
ヘッド数 | 20 | 30 | |
固定ヘッド容量 | 1.607 MB(FACOM 6421A4F/B4F/C4F) | 1.144 MB(FACOM 6421A4F/B4F/C4F) | |
ポジショニング時間 | 平均18 ms(最大35 ms,最小5 ms) | ||
平均回転待ち時間 | 7.6 ms | ||
データ転送速度 | 1.859 MB/s | ||
装置 | 搭載DE数 | 4 | |
記憶容量 | 1.784 GB | 1.27 GB | |
接続システム | FACOM M-100/300シリーズ |