電気試験所では1960年5月にトランジスタ計算機ETL Mark Vを開発した.これは電気試験所内の科学技術計算の需要を充たすために,ETL Mark IVの成果に基づき10進浮動小数点方式の計算機として1958年に計画された.方式および論理設計は相磯秀夫を主力に矢板徹(いずれも電気試験所電子部),北川節(慶大工学部実習生),都築東吾(慶大大学院学生)などにより行い,製作は日立製作所が行った.クロック周波数は230KHz,記憶装置は磁気ドラムで4,000語の容量を持ち,約150種の命令を実行できた.Mark Vはその後日立製作所が商品化したHITAC 102のプロトタイプとなった.また慶應に帰った北川と都築はMark Vの設計をもとにKCCを製作し,学内での使用に供した.