DIPS-104OSは,タイムシェアリングシステム(TSS)用のDIPS-103-10/11OSと,リアルタイムシステム(RTS)用のDIPS-103-20/21OSとの実用化実績の上に立って,その後の技術動向や事業動向を踏まえ,マルチプロッセッサ制御方式をはじめ,種々の新たな技術の開発と既存技術の改良を重ねて競争裡にあるデータ通信市場におけるDIPSの適用分野の拡大とコスト性能比,信頼性の向上をねらいとして実用化が計画された.
ハードウェアの面ではDIPS-1からDIPS-11/10シリーズへと本体系,周辺系ともに高速化,大容量化,高信頼度化,小型・経済化そして構成の柔軟化等の技術を追求してそれぞれの成果が得られていた.
DIPS用OSとしては,まずシステム二重化(デュープレックス)運転用の103OSが実用化され,ついでこれをタイムシェアリングシステム(TSS)用,リアルタイムシステム(RTS)用に専用化して,それぞれ103-10系OS,103-20系OSが実用化された.103-10系OSは1973年12月から科学技術計算サービス(DEMOS-E)に,103-20系OSは1975年10月から販売在庫管理サービス(DRESS),続いてバンキングサービスに導入されていった.
この間,OS技術は計算機の適用分野の多様化,高度化に対応してマルチプロセッサ(MP)方式,仮想記憶方式,通信制御方式等を中心に大きく進歩してきた.一方,電電公社(現NTT)のデータ通信サービスにおいても既存サービスの質的向上のみならず,公共的,全国的,技術先導的なナショナルプロジェクトへの対応が必要となってきた.このような情勢から,DIPS-11/10シリーズを始めとするハードウェアの改良計画とともにOSに対しても新しい方式技術の導入により市場性が高く,コスト性能比の良い,そしてナショナルプロジェクトを始めとする各種リアルタイムシステム(RTS)への適用性の高い新OSが必要となった.
DIPS計画では企画当初からMP方式を1つの大きな技術的特徴としてきたが,103系OSでは実現の機会がなかった.そこで上述の情勢に対応して,マルチプロセッサ(MP)方式を主体にした新OSとして104OSを実用化することとした.
104OSは,103系OSの実用化が軌道に乗った1971年後半から,マルチプロセッサ,マルチサービスを指向して検討が開始されたが,マルチサービスについては,適用形態が未定の段階ではセンタの運用条件などに関する外部条件の設定が困難であり,時期的にも103系OSの実用化の最繁期と重なったこともあって,検討が一時中断された.
1973年に入ってからMP制御に関する技術的見通しを得,また,適用対象をリアルタイムシステム(RTS)に限定することによる外部条件の設定もできたため,1974年より本格実用化に着手した.104OSは,リリース1からリリース3に分けて順次実用化され,リリース1は1976年央,リリース2は1977年央,リリース3は1978年にそれぞれリリースされた.このOSで実用化された機能は,その後のDIPS−OSの基盤機能として長く利用された.