SSU(System Storage Unit:システム記憶)を用いてメインフレームシステムのスケーラビリティの更なる向上を図るための強化機能が, 1995年9月,富士通から同社の超大型向けOSであるOSIV/MSP(1989年6月発表)の機能強化版として出荷された.
この当時,同社ではOS(オペーレティングシステム)の強化をV/L(バージョン・レベル)アップで図るのではなく,機能修正と同様な方法で強化ソフトウェアも提供する方法に切り替えていた.この背景には,V/Lアップに伴う手続きの軽減に加え,メインフレームシステムに期待される機能がOSとミドルウェア層(同社の場合はAIMを代表とするようなソフトウェア群)の機能強化との連携を抜きには語れなくなって来ていた時代の影響がある.
SSUによるマルチクラスタ構成のシステムは,1990年9月に発表されたFUJITSU M-1800モデルグループにて最初に実現された.このマルチクラスタ構成のシステムを同社ではSCMP(System Storage Coupled Multi-Processor system)と呼んだ.SCMPはクラスタと呼ばれる密結合マルチCPUシステムをSSU利用の並列化技術により複数台結合するものである.SSUはクラスタ間の通信に用いられると共に,クラスタ間で共有すべき情報の高速格納庫として利用される.クラスタ間で共有される典型的な情報としてはデータベースの制御情報などがある.
1995年9月に行われたOSIV/MSP の大幅なエンハンスは,以降のSCMP構成での大幅なスケーラビリティの向上を可能にした.初期(1990年9月発表当時)のSCMPは最大CPU数は16(4クラスタ構成時)であったが,FUJITSU GS8000シリーズ(1995年5月発表)では最大32CPU(4CPU×8クラスタ),FUJITSU GS8800モデルグループ(1998年1月発表)では最大96CPU(12CPU×8クラスタ),その後のFUJITSU GS8900モデルグループ(1999年10月発表)では最大256CPU(16CPU×16クラスタ)をカバーするに至った.同様な強化は同社の大型向けOSであるOSIV/XSPにも提供されていった.
なお,SSUによるSCMP構成のシステムはスケーラビリティの向上に加え,ミッションクリティカルシステム向けの高信頼システムの構築を可能にする仕組みでもある.図はその様子を示したものである.以下に図を解説する.
- SUREは複数のPE(Processing Element)を内蔵した,同社の無停止通信プロセッサである.OSIV/MSPの1990年9月のエンハンス発表版にて最初にサポートされた.
- SSUで結合されたクラスタ間ではデータベースの共用を高速に行うことが出来ると共に,一部のクラスタをホットスタンバイ構成にすることで,業務の連続運転を可能にする.
- また,ディスク系もOCLS(注1)(Optical Channel Linked Station)を経由してパスの二重化や活性保守を可能にしている.