【筑波大学】 CP-PACS

CP-PACSは,筑波大学が日立製作所の協力を得て開発した理論ピーク性能614ギガFLOPSの分散メモリ型超並列スーパーコンピュータである.システムは2,048台の演算ユニット(Processing Unit(PU)と入出力を分散処理する128台のI/Oユニット(Input/Output Unit(IOU))からなり,これらが3次元結合網により結合されている.1996年9月にLinpackベンチマークで368.2ギガFLOPSの世界最高記録を達成し,同年11月に世界のスーパーコンピュータのTop500リストの第1位に登録された.

CP-PACSは1996年10月より筑波大学計算物理学研究センター(現計算科学研究センター)において運用が開始され,以降8年間にわたって稼動し,2005年9月に運転を終了した.

この間,CP-PACSを用いて素粒子物理学,物性物理学,宇宙物理学分野における数値的研究などにおいて世界的な業績を挙げた.

1970年代から1980年代半ばにかけて,筑波大学では科学技術計算用並列コンピュータPACS/PAXシリーズが開発され,原子炉中での中性子拡散などの具体的な計算に用いられた世界的にも先駆的な業績がある.シリーズ5台目のQCDPAXは完成当時の1989年には世界最高速に部類する性能(13.75ギガFLOPS)を実現し,素粒子物理学の研究に10年間にわたって使用された.これらの業績をもとにして,物理学の研究に適した超並列スーパーコンピュータCP-PACSの開発計画が1991年夏から検討された.

CP-PACS計画は1992年度の文部省の「学術の新たな展開の為のプログラム」の実施テーマの1つとして採択されて正式に発足し,同時に筑波大学計算物理学研究センターが設置された.文部省科学研究費補助金より総額約22億円を受けて1995年度までの5年間にわたり開発が実施された.1996年3月に1,024処理ユニット構成(理論ピーク値307ギガFLOPS)の第1期分が完成して稼働を開始し,2,048処理ユニット構成への増設は9月末に終了し,理論ピーク性能614ギガFLOPSの超並列スーパーコンピュータシステムが完成した.

CP-PACSの各演算ユニット(Processing Unit(PU))には,PA-RISC1.1アーキテクチャに基づいて開発されたスーパースカラ型のRISCプロセッサと主記憶64メガバイトが搭載されている.PU単体のピーク性能は300メガFLOPSで,2,048CPUでピーク性能614ギガFLOPSを実現した.RISCプロセッサによる大規模科学技術計算で起きるデータキャッシュの容量不足による演算性能低下に対して,CP-PACSでは擬似ベクトル機能PVP-SW(Pseudo Vector Processor based on Slide Window)を導入することにより解決を図り,スーパースカラ・プロセッサでありながら,効率のよいベクトル処理を可能にした.

計算物理学研究センターは2004年4月に改組拡充され,計算科学研究センターが設置された.2006年7月からはCP-PACSの後継機PACS-CSが運用されている.

日立はCP-PACSでの共同開発の技術をもとに,分散メモリ型超並列スーパーコンピュータSR2201を1996年に開発し販売した.

CP-PACSの詳細については下記を参照されたい.

・CP-PACS
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/cppacs/cppacs-j.html
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/ccs/center/facilities-j.html
・CP-PACS計画
http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/cppacs/project-j.html
・計算科学研究センター
http://www.ccs.tsukuba.ac.jp/CCS/index-j.html
CP-PACSの概略仕様
システム PU台数 2,048
IOU台数 128
総メモリ容量 128GB
理論ピーク値 614 GFLOPS
OS UNIX
演算ユニット
(Processing Element(PU))
プロセッサ PA-RISC 1.1仕様,PVP-SW機能
クロック 150MHz
理論ピーク値 300MFLOPS
メモリ容量 64MB
キャッシュメモリ 1次:16KB(命令)16KB(データ)
2次:512KB(命令) 512KB (データ)
相互結合網 方式 3次元ハイパークロスバー結合網
転送ピーク性能 リンク当たり 300MB/s
転送方式 wormhole +リモートDMA
I/Oユニット
(Input/Output Unit(IOU))
総メモリ容量 529GB(RAID-5の分散ディスク)

  
CP-PACS