FUJITSU VPP500は,ベクトルパラレル型と呼ばれる,富士通の新方式のスーパーコンピュータ.ベクトル処理能力を有するブリーフケース大のプロセッサユニットを並列(パラレル)に接続する形態を持ち,355ギガFLOPS(ギガフロップス)の世界最高速(発表時)の処理性能を持つスーパーコンピュータとして,1992年9月に発表された.355GFLOPSの処理性能はプロセッサユニット222台を接続したときのもの.
ガリウムひ素LSIなどを採用したプロセッサと超高密度実装による基板搭載により,単一プロセッサユニットで1.6ギガFLOPSの最大ベクトル性能を実現.さらに個々のプロセッサユニットがクロスバネットワークによって結合され,同時並列処理を行うことで最大のベクトル性能355ギガFLOPSを実現する.主要な適用領域は,数値流体力学を利用した航空宇宙工学や気象・環境解析,粒子シミュレーションを利用した核融合研究,分子動力学法による分子化学など.
なお,VPP500は,航空技術研究所(2003年10月より宇宙航空研究開発機構 JAXAに統合)と富士通が共同開発し,1993年1月に稼働したNWT(数値風洞,Numerical Wind Tunnel)と同じ技術によって開発された.
モデル名 | VPP500/7〜VPP500/222 |
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発表時期 | 1992年9月 |
プロセッサ数 | 7〜222 |
単一プロセッサの 最大ベクトル性能 |
1.6GFLPS |
最大ベクトル性能 | 11.5〜355.2 GFLOPS |
その後,富士通ではFUJITSU VPP500の流れを汲むベクトルパラレル型のスーパーコンピュータとして,1995年2月にCMOS(注1)テクノロジを採用したFUJITSU VPP300シリーズ/VXシリーズ,1996年3月にFUJITSU VPP700シリーズ,1999年4月にVPP5000シリーズを発表している.FUJITSU VPP300シリーズ以降のVPP各シリーズはCMOSテクノロジが採用されている.なお,FUJITSU VPP5000シリーズの単一PEのLINPACK(注2)性能は,100元が1125MFLOPS,1000元が8759MFLOPS.
- (注1)CMOS : Complementary Metal Oxide Semiconductor(相補性金属酸化膜半導体)
- (注2)LINPACK : LINer equation software PACKage
米国テネシー大学のJ.Dongarra博士によって開発された連立一次方程式の解法プログラム.このベンチマーク結果は,スーパーコンピュータだけのものではなく,ワークステーション,パーソナルコンピュータに至るまで数多くの計算機について登録されている.
シリーズ名 | VXシリーズ | VPP300シリーズ | VPP700シリーズ |
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発表時期 | 1995年2月 | 1996年3月 | |
PE数(*) | 1〜4 | 4〜16 | 16〜512 |
単一PEの 最大ベクトル性能 |
2.2 GFLOPS | ||
最大ベクトル性能 | 2.2〜8.8 GFLOPS | 8.8〜35.2 GFLOPS | 35.2〜1126 GFLOPS |
内蔵ディスク数 | 4GB〜60GB | 4GB〜188GB | 4GB〜1916GB |
クロスバ性能 | 最大570MB/s×2/PE (任意のPE間) |
(*)PE (Processing Element) : スカラユニット,ベクトルユニット,主記憶,データ転送ユニットを備えた並列処理の要素計算機.
発表時期 | 1999年4月 |
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PE数 | 2〜512 |
単一PEの 最大ベクトル性能 |
9.6 GFLOPS |
最大ベクトル性能 | 19.2〜4915 GFLOPS |
クロスバ性能 | 最大3.2GB/s×2/PE (任意のPE間) |
以上の諸元は発表時のもので,その後の改良で変更されている場合がある.