【日本電気】 ACOS−6/NVX

ACOS-6/NVX(New Virtual eXtended)は日本電気の大型汎用機用オペレーティングシステムであり,1991年3月に発表され,1992年3月から出荷された.
ACOS-6/NVXは,先に出荷した大型汎用機用オペレーティングシステムACOS-6/MVXおよびACOS-6/MVXIIから上位互換性を保ちつつ,同時に出荷したシステム3900で新たに開発したACOS拡張システムアーキテクチャに対応し,拡張性・信頼性を強化したオペレーティングシステムである.拡張されたデータ空間と,主記憶装置を補完する拡張記憶装置とを装備し,巨大なデータの効率的な処理を可能とした.ACOS-6/NVXは,システム3900およびシステム3700に搭載された.
新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.

1.アーキテクチャの特長
(1)拡張システムアーキテクチャ
最大1GBの主記憶装置と最大8GBの拡張記憶装置EMU(Expanded Memory Unit),および,大容量/高性能な電子ディスク装置と磁気ディスク装置とを備え、これらの記憶装置を効率的に用いて巨大なデータを処理する最大4ペタバイトまでアドレス可能な拡張データ空間を提供した.これにより,90年代の企業情報システムの基盤となった大規模オンライントランザクションシステム,および,大規模データサーバに必要な諸元と性能レンジを実現した.


図2.拡張記憶装置の利用

図2.拡張記憶装置の利用



(2)拡張データ管理機構
大容量のデータベースキャッシュBCIII(Buffer Control III)を,拡張データ空間を通して主記憶装置と拡張記憶装置に配置し,高速なデータベースアクセスを実現するとともに,データのソート領域とシステムファイル領域も拡張データ空間に配置可能とし,大容量データを高速に処理する拡張データ管理機構として実現した.本機構は、バッチジョブ、TDS-AF(Transaction Driven System - Advanced Function)、TSS-AF(Time Sharing System - Advanced Function)の各処理形態から、既存I/Oインタフェースを介して利用可能とした.


図3.拡張データ管理機構

図3.拡張データ管理機構



2.機能の特長
(1)リレーショナルデータベースの機能強化
ACOS-6/MVXから継承性のあるRIQS(Relational Information Query System)に対して、大幅な諸元拡大と多様な格納モードとSQL向け高速エンジンを強化した高性能リレーショナルデータベースRIQSII V2を提供した.
(2)オープンシステム接続への対応機能
分散コンピューティング環境におけるUNIXシステムとの接続需要の普及に対応し,TCP/IPプロトコルの仮想端末機能(telnet),ファイル転送機能(ftp),ジョブ転送機能(NQS),ファイルサーバ機能,プリントサーバ機能を提供した.また,国際標準OSIプロトコルのファイル転送アクセス(FTAM),電子メール機能(MOTIS/MHS)を提供した.
(3)高運用性,高可用性への対応機能
システムの成長に伴う運用コストを低減するために,ファイル装置の管理を効率化する統合ストレージ管理機能USM(Unified Storage Management),分散システムの運用を自動化する自動運転機能AOS(Automatic Operation System)を提供した.
また,無停止指向のシステム構築の基盤となる高冗長性/高信頼性技術として,ホットスタンバイシステムMSRF(Multi System Ras Facility),ソフトウェアによるディスク二重化DVF(Dual Volume Facility),プロセッサリリーフ等のRAS技術を,ACOS-6/NVXとシステム3900とで集大成した.
(4)高生産性への対応機能
増大するアプリケーション開発コストを低減するために,開発方法論STEPSII(Standardized Technology and Engineering for Programming Support II),分析/設計からプログラミングまでの工程を視覚化するEWS CASE,プログラム開発の生産性,保守性,信頼性を向上させるSOFPIA(SOFtware Productivity Improvement Aid)などのソフトウェア開発支援システムを提供し,ソフトウェアライフサイクル全体の生産性向上を実現した.

 
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