FACOM 610Aは,媒体の自動ローディング機構を初めて採用した富士通の高性能磁気テープ装置であり,1975年2月に完成した.本装置は,コンピュータシステムの高性能化に伴う要求を満たすため,処理速度の増大,操作性および信頼性の向上を主眼に,開発され,以下の特長を有した.
- (1) 処理能力の向上
- 磁気テープのバッファリングにテーパ状のサブコラムを追加して,テープ速度200インチ毎秒(5.08メートル毎秒)の高速度を実現.これにより,データ転送速度は320 キロバイト毎秒に高速化され,リワインド時間は45秒以下に短縮された(従来はテープ速度120インチ毎秒,データ転送速度192キロバイト毎秒).
- (2) 操作性の向上
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磁気テープリールの固定および解除,テープの巻き付けおよび巻き取り,前面ウィンドウの開閉を自動で行なうオートローディング機構の採用によりオペレータの操作労力を著しく軽減.
本装置では前面ウィンドウは左右に開閉したが,後の装置では上下に開閉するように変更された. - (3) 診断機能の充実
- 磁気テープ制御装置にマイクロプログラム制御方式を採用し,制御装置自身の内部診断,およびオンラインでの磁気テープ装置の予防保守機能が強化された.
FACOM 610A1 | FACOM 610A2 | FACOM 610A3 | |
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完成時期 | 1975年2月 | ||
記録密度(RPI) | 1600 | 1600/800 | 800/556 |
テープ速度 | 200インチ/秒 | ||
巻き戻し時間 | 45秒以下(フルリール) | ||
データ転送速度 | 320KB/秒 | 320/160KB/秒 | 160/111k桁/秒 |
記録形式 | PE | PE/NRZI | NRZI |
トラック数 | 9 | 7 | |
主要接続システム | FACOM 230-45S/55/75,FACOM 230-38/48/58,大型FACOM M-100シリーズ |