H-6586磁気ディスク装置は,H-6585(1,260MB/sp)の1.5倍容量機として開発された.
本装置は,円板自製の特徴を生かし,従来の14インチ径円板を廃し,9.5インチ径の円板を新規開発し,初めて薄膜ヘッドの採用に踏み切った.アクチュエータにはセラミックレールを使用したリニア方式を採用し,当時としては,強力なネオジウム磁石のボイスコイルモータを開発し,高速/高精度アクセス機構を実現した.
このHDA周りの高密度実装設計によりHDAの体積を大幅に縮小することに成功し,IBM3380Kと同一床面積で8台のHDAを実装し,装置当り倍容量が実現できた.
薄膜ヘッドは従来の機械加工/巻線加工で形成していたヘッドを,半導体技術と同様ウェーハ上に磁気回路/巻線部パターンを形成する方式で,磁気回路部分の微細化により高性能化を図ったものであり,スパッタ設備/パターン形成装置等,従来になく新規の設備投資を必要とした.
また,形成するパターンが微細であり,僅かの塵埃でも不良になる為,これらの装置は全てクリーンルーム内に設置され,その設備投資も全体投資のかさ上げとなった.
アクチュエータ当りの容量は1.89ギガバイトと,IBM3380Kとの互換性がありPCMディスクとして販売された.
これらの技術に支えられて完成した装置は,IBM機の床面積で2倍の容量を記憶できる為,世界的に大好評となり,日立のPCMディスク装置ビジネス拡大の起爆剤となった.
完成時期 | 1988年7月 |
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装置当り記憶容量 | 15GB/DKU |
スピンドル当り記憶容量 | 1.89 GB |
BPI | 23KBPI |
TPI | 1.5KTPI |
面記録密度 | 35 MB/inch² |
円板サイズ/枚数 | 9.5インチ/9枚 |
ヘッドタイプ/アクチュエータ当り本数 | 軽荷重薄膜ヘッド/30本+1本(サーボ) |
平均アクセス時間 | 12.5ms |
ディスク回転数 | 3,600rpm |
データ転送速度 | 3 MB/s |