1954年7月パラメトロンが発表され,おりしもイリノイ大学留学より帰国した室賀三郎をリーダに,並列演算方式による実用計算機の試作に電電公社通研において着手し,1957年3月に我が国最初のパラメトロン計算機MUSASINO-1号を完成させた.膨大なILLIACライブラリの利用を狙いとして,ILLIAC Iと同じアーキテクチャを実現する方針のもとに,室賀三郎が論理設計を,山田茂春が記憶装置を,高島堅助がパラメトロン素子と励振装置を担当した.本計算機には,パラメトロン約5,400個が使用され,当時約1,500万円の試作費用を要した(表:MUSASINO-1の主要諸元).
MUSASINO-1は,所内の計算サービスに使用されていたが,手作りの試作機であったこともあり,ハードウェア障害も多く,保守運用に多くの労力を要したことから,まったく同じ論理構成で電子交換用に実用化された眼鏡形パラメトロンを使用した商用機MUSASINO-1Bを1960年に完成した.同機は,後に富士通信機製造(現富士通)より科学計算用中型機FACOM 201として発売された.