【日本電気】 ACOS-4/XVP
日本電気は1991年4月にACOS-4/XVP(eXtended multi Virtual Processor)の出荷を開始した.
ACOS-4/XVPは,従来のACOS-4/AVP XRおよびACOS-4/MVP XEを発展的に統合したオペレーティングシステムで,中小型から超大型機までのすべてのACOSシステム(3400,3500,3600,3800)をカバーしたオペレーティングシステム(OS)である.
新しく採用したアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.
1.アーキテクチャの特長
(1)最大128Tバイトへの仮想記憶空間の拡張
初期の
ACOS-4ではプロセス当たりの仮想記憶空間が最大240Mバイトで,1985年に出荷された
ACOS-4/MVP XEで最大2Gバイトに拡張した.ACOS-4/XVPでは,従来の2Gバイトの基本アドレス空間とは別に,47ビットアドレスレッシングによる最大128Tバイトの拡張データ空間を提供しユーザにも解放した.データ空間は,基本アドレス空間と同様,プロセス固有の空間であり,各プロセスはそれぞれ128Tバイトの独立した拡張データ空間を持つことができる.
図-1 論理空間の拡張(2)拡張記憶装置 EMU(Extended Memory Unit)
EMUは主記憶との間で高速にデータ転送できる高速かつ大容量の記憶装置で,データベースのバッファプールやページング/スワッピング領域などとして利用することにより,システム全体処理の高速化を可能とした.
(3)拡張性を持たせたOS基本部
ACOS-4/XVPは中小型から超大型機までの全てのACOSシステムを1つのOSでカバーしている.OS基本部は搭載されるシステムの規模に対応した3つのレベル(SP I,SP II,SP III)を用意し,OS基本部の諸元(メモリ量やプロセス数など)の最適化を行った.
図-2 OS基本部(SP I,SP II,SP III)2.機能の特長
(1)ネットワークの大規模化および,オープン化対応
31ビットのネットワークアドレスを採用し,最大21億台ものコンピュータやワークステーションを接続可能とした.さらに,国際標準プロトコルOSIや各種業界標準プロトコルへの対応や,TCP/IPソケットインタフェース対応によるオープンサーバ接続など,マルチベンダ/マルチプラットフォーム環境との接続性を高めた.
(2)リレーショナルデータベースの大規模・高性能化とSQL対応
大量のデータを確実に保管し,高速かつ有効に活用するために,大規模化/高性能化に対応したリレーショナルデータベースシステムRIQSII V2を提供した.RIQS IIでは,SQLをはじめとする国際標準に準拠し,SQLインタフェースをサポートするPC上のISVソフトなどのクライアントからの利用にも対応した.
(3)オペレーションの自動化/省力化による運用性向上
TOM(Total Operation Management)を中心としたオペレーション自動化/省力化機能により,複数システムの運行状態の1カ所での集中監視や,システムから発生する重要なメッセージへの自動応答,運用カレンダ/スケジュールによるシステム運転制御の自動化を実現し,複雑化するシステム運用を支援した.
(4)複数ホストでの相互バックアップによる信頼性向上
従来のホットスタンバイ構成は,稼働ホストと待機ホストを1対1で構成するため,システム切り替え後に1つのホストに負荷が集中し,レスポンスやスループットが大幅に低下した.本OSでは,待機ホストを複数台用意して相互でバックアップすることが可能となり,切り替え後の負荷の分散,信頼性の向上,マシン稼働率の向上を実現させた.
図-3 複数ホスト相互バックアップ