【日本電気】 ACOS-4

日本電気は1974年5月にACOS-4(Advanced Comprehensive Operating System-4)を発表し,1975年10月に出荷開始した.
ACOS-4は,NEAC-シリーズ2200ユーザにおけるソフトウェア資産の継承性と互換性を保持しながら,最新技術や進展するアーキテクチャに対応できる柔軟性や拡張性,システムの稼働率を高める信頼性を考慮して開発され,中小型機のACOSシステム300システム350,中大型機のシステム400システム450システム500に搭載された.

採用されたアーキテクチャ,および主な機能についての特長は以下の通りである.

1.アーキテクチャの特長
(1)制御単位として「プロセス」を基本とし,プロセスの切り替えなどはCPUハードウェアが行い,プロセス間の同期や通信の手段としてはセマフォを採用した.
(2)記憶管理に関しては,論理的に意味がある「セグメント」をベースとし,プロセスごとに独立した空間を提供する多重仮想記憶を実現した.セグメンテーションは使いよさと信頼性を向上させたほか,セグメント属性を用いての記憶保護を実現した.

図-1

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(3)リエントラントルーチンを実現し,記憶保護機能を高めるコールスタック制御機構をハードウェアで備えた.
(4)高水準命令の1ステートメントを少ない機械語命令で高速に実行できる間接アドレス機構と,強力な10進演算命令や文字ストリング命令を備えた.
(5)命令実行機構とは独立した入出力プロセッサがチャネルプログラム実行のスケジュール管理を行い,効率のよい入出力制御を実現した.
(6)システムの信頼性を向上させる高度な異常検出機能を備えたことで,プログラミスの早期発見や暴走の抑止に効果をあげた.
2.機能の特長
(1)エミュレーションシステム
従来機NEAC-シリーズ2200用のオブジェクトプログラム,原始プログラム,ファイル媒体を変更なしにシステム300/400/500上で動作させるため,エミュレーションを備えた.
(2)端末とアプリケーションプログラム間の通信を制御するメッセージ管理
  • ユーザプログラムは端末に対して直接,同期をとりながらメッセージの送受信を行うのではなく,ソフトウェア的に設けられたメールボックスに対して送受信させることでプログラミングを容易にした.
  • メールボックスは階層構造を持たせ,接続や構成に柔軟性/汎用性を持たせた.
  • 仮想ネットワークの概念を導入し,単一端末構成の簡単なネットワークから,他コンピュータを含む複雑な構成のネットワークまでを統一的に制御可能とした.
(3)CODASYL仕様のデータベース ADBS/DDBS
CODASYL標準に準拠した高速汎用データベース管理システムADBS(Advanced Data Base System)をサポートした.ADBSは,データ構造を定義し,これに基づいてACOS-4の仮想記憶編成ファイル(VSAS:Virtual Storage Access System 編成ファイル)に格納したデータをアクセスする方式のネットワーク型データベースである.また,DDBS(Descriptor Data Base System)は,現存する標準編成ファイルやVSAS編成ファイルをファイル間/レコード間の関係を定義した制御情報に基づいてアクセスするもので,CODASYL策定による言語仕様に準拠したデータベースである.
(4)プログラミング言語の高水準機能対応,非手続き型言語の強化 
プログラミング言語としては,分類合併やデータベース処理など豊富な機能を備えたCOBOL,JIS水準7000の全言語機能を備えたFORTRAN,システムプログラム作成用の高水準プログラミング言語HPLのほか,RPG,NAL(Assembler),GMP(Generalized Macro Processor),NL/II(Non Programmer Language/II)などの言語処理を可能とした.
ACOS-4アーキテクチャの発展
発表年 対応機種 機能
1974 S300/S400/S500 ACOS-4アーキテクチャ
1979 S800-III セグメンテーション+ページング
マルチプロセッサ
チャネルDAT(仮想⇒実アドレス変換)
1985 S1500 2GB空間/プロセス(31ビットアドレス)
高性能仮想計算機VMX
疎結合マルチプロセッサ(LCMP)
1990 S3800 ACOS-4拡張システムアーキテクチャXSA
128TB拡張データ空間/プロセス
拡張記憶
チャネル数、プロセス数等諸元拡大

  
ACOSの各種マニュアル