【日立】 仮想計算機システムVMS, VMS/ES,VMS/AS

仮想計算機システムとは1台の実計算機上に複数の仮想計算機(VM:Virtual Machine)を生成し,各々のVM上でOSをそれぞれ独立に実行させることを可能にしたシステムのことである.Mシリーズ計算機用の仮想計算機システムとしてはVMS,VMS/ES,VMS/ASの3種類があった.これらの上でMシリーズ各OSおよびEDOS/MSOが走行した.
図-1にVMSの概念図を示す.VMの実現は仮想計算機制御プログラム(VMCP:Virtual Machine Control Program)によって行われた.


図-1「VMSの概念図」

図-1「VMSの概念図」


VMSは1979年10月に完成した.
VMS/ESはMシリーズ拡張アドレッシングをサポートしたVMSのエンハンス版で,1985年10月に完成した.VMS/ES上ではVOS3/ES1が実行できた.
VMS/ASはVOS3/ASの実行を可能にした仮想計算機システムで1990年に完成した.

Mシリーズ計算機用仮想計算機システムは次のことを目的として開発した.

(1)システム移行の支援
旧システムから新システムへの移行において,1つの実計算機上で新旧両システムを同時稼働させることで,移行作業の平準化,ハードウェア設備コストの低減を可能とする.
(2)システム開発の支援
実計算機の枠を離れて複数のVMを構成でき,同時に多数のOS下でのジョブ実行,システムテストができる.一方で本番業務を行いながら,並行して新システムを開発といった柔軟な利用形態を実現できる.

Mシリーズ計算機用仮想計算機システムには以下の特長があった.

項目 説明
高性能化の実現 仮想計算機システムの性能は,実計算機資源の配分制御,VMの生成,実行の制御を行うプログラムVMCPの性能に大きく依存する.特権命令シミュレーション用ファームウェアVMA(VM Assist),VM記憶装置の常駐化,高速入出力シミュレーション等で高性能化を実現
高信頼性の実現 OSが直接処理可能な障害は直接OSのRAS機能を適用,VMCPのシミュレーション処理でのハードウェア障害は,VMCP自身にOSと同等以上のRAS機能を備えることで高信頼性を実現
豊富なセンタ運営機能
  • 実際の機器アドレスとは独立に自由なVM構成設定が可能
  • VMCPのスプーリング機能による入出力機器の共用
  • センタ運営支援のため,豊富な課金機能を用意
  • システムの性能解析,デバッグ用のモニタ機能等も充実
OSのハンドシェイキング VM上で実行することを配慮し,特権命令の発行の抑止等のVMCPオーバヘッド削減策をVOS2等のOSがハンドシェイキング機能としてサポート

図-2にVMSのスプーリングの概念図を示す.カード読取機,ラインプリンタ等のユニット記録装置は,VMCPのスプーリング機能により,複数VM間で共用可能となる.


図-2「VMSのスプーリングの概念」

図-2「VMSのスプーリングの概念」