【日立】 VOS3/ES1

ジョブごとにそれぞれ独立した16メガバイトの仮想記憶装置を提供する多重仮想記憶装置がVOS3の特長であるが,ユーザのアプリケーション規模やシステム規模が拡大するに従い,16メガバイトという枠をはるかに越える大きな空間が必要とされるようになった.このような要求に応えるためHITAC MシリーズのM-280,M-260プロセサグループにアドレッシング方式を24ビットから31ビットに拡張する拡張アドレッシング機構が追加された.この拡張アドレッシング機構をサポートしたOSがVOS3/ES1である.VOS3/ES1ではジョブ毎の仮想アドレス空間が16メガバイトから2ギガバイトへと一挙に128倍にも拡大した.

図-1は仮想空間の2ギガバイトへの拡張を示したものである.


図-1「仮想空間の2ギガバイトへの拡張」

図-1「仮想空間の2ギガバイトへの拡張」


VOS3/ES1は1983年11月に発表,1984年12月から出荷を開始した.

M-280,M-260プロセサグループは24ビットアドレッシング用モードのMモードと24ビット,31ビットのいずれのアドレッシングモードも可能なM/EAモードの2つがあった.表-1はこのハードウェアのモードとそれをサポートするOSとの関係を表したものである.

表-1 プロセサモードとそれをサポートするOSとの関係
  OS
VOS3/ES1 VOS3/SP
CPU M-280プロセサグループ Mモード ×
M/EAモード ×
M-260プロセサグループ Mモード ×
M/EAモード ×
M-240 プロセサグループ ×

M/EAモードでは,24ビットアドレッシングと31ビットアドレッシングの2つのモードを同時に実行できた.これにより,24ビットの既存プログラムと新しい31ビットアドレッシングを使ったプログラムを並行して実行できるので,プログラムの互換性を維持できるとともに,移行の平滑化が図れた.

VOS3/ES1では,制御プログラムの一部も16メガバイトを超えた拡張領域に移動したため,16メガバイト以下の領域にこれまでより大きなスペースが生まれた.これにより既存の24ビットアドレッシングのアプリケーションプログラムの拡張,端末数の増加,ファイル数の増加等が可能になった.

さらに実記憶についても31ビットアドレッシング方式を採用しており,実記憶が一元的に扱われ,実記憶の有効利用が行われた.

表-2にアドレス拡張を実現するVOS3関係ソフトウェア一覧を示す.

表-2 アドレス拡張を実現するVOS3関係ソフトウェア
製品名称 機能概要
VOS3/ES1 VOS3用のシステムプロダクト.
31ビットアドレッシングの制御プログラム機能を実現する.
LNK/LD2 EAオプション LNK/LD2(リンケージエディタ/ローダ2)へ付加することで,31ビットアドレッシング用のリンケージエディタ,ローダ機能を実現する.
OFORT77 EAオプション OFORT77(最適化FORTRAN77)へ付加することで,31ビットアドレッシング用のFORTRANプログラム生成機能を実現する.
DCCMIIUEAオプション DCCMIIへ付加することで,DCCMIIのプロシジャ,テーブルの一部を拡張アドレス領域の中で動作可能とする.
XMAP EAオプション XMAPへ付加することで,DCCMIIの下での拡張アドレス領域用のマップの生成,制御を実現する.