HIPAC 101,HITAC 301,HIPAC 103などの初期のハードウェアの時代には,プログラムをパンチカードや紙テープから入力して機械語に変換する記号入力ルーチンや,記憶装置に蓄えられた擬似命令を機械語に変換しながら実行していくインタプリタ等,個別の処理をするプログラムがあるだけで,コンピュータ全体を制御するオペレーティングシステムに相当するものはまだ存在しなかった.
たとえばHITAC 301では,紙テープで書かれたプログラムを入力するとSIPという記号入力プログラムがそれを機械語に変換して結果を記憶装置に蓄える.SIPが最後の命令の処理を終わると計算機はいったん停止するのでスタートボタンを押してプログラムを実行させる.このように人間が介在してコンピュータが制御されていた.
1958年に発表したHIPAC 101は,1959年6月にパリで開催されたUNESCO主催の計算機展示会に出品,1960年7月から出荷を開始した.HITAC 301は日立製作所初のトランジスタ計算機で,1959年5月に日本電子工業振興協会に納入した.HIPAC 103は科学技術計算用コンピュータとして開発したパラメトロン式計算機で,初号機は1961年12月に関西電力に納入した.
表-1はHIPAC 101,HITAC 301,HIPAC 103のシステムソフトウェアを示す.
機種 | システムソフトウェア |
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HIPAC 101 |
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HITAC 301 |
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HIPAC 103 |
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表2にHITAC 301のおもなライブラリプログラムの一覧を示す.HITAC 301のプログラムライブラリは大分類としてシステムプログラム,事務計算実務プログラム,技術計算プログラム,技術計算用サブルーチン,技術計算ユーティリティルーチン,教育用およびデモンストレーション用プログラムの6つに分けられ,さらに中分類,小分類と細分され整理されていた.