【富士通】ASP (FUJITSU K6000 / GRANPOWER6000 / PRIMERGY 6000各シリーズ用)

 ASP(Advanced System Products)は,FUJITSU K6000シリーズ用に開発された,CSP/FXの後継となるOS(オペレーティングシステム)であり,1992年10月に発表された.FUJITSU K6000シリーズは,オープン化とマルチベンダとの共存をコンセプトとして開発され,ASPは,CSP/FXの後継として,CSP/FXの資産をそのまま利用することを可能とした.

 ASPには時系列としてEnn系 (E72/E92, E73/E93, E94, ・・・)と後続のVnn系 (V10, V11 ・・・)があり,Enn系はFUJITSU K6000シリーズおよびFUJITSU K6000αシリーズに適用され,Vnn系はFUJITSU GRANPOWER6000シリーズ(1997年5月発表)以降の機種に適用された.なお,Enn系には下位機向けのE70系と上位機向けのE90系があったが,E90系でCSP/F3互換プログラム機能(開発環境,実行環境,資産移入)が整備されるに伴い,E70系はE73を最後にE90系に吸収された.
 ASPは,E90系が1992年12月に出荷されたE92を皮切りに1996年12月出荷のE98まで矢継ぎ早にエンハンスされ,続くVnn系も1997年8月に出荷されたV10に始まり2000年6月にV15が出荷されるというように,ハイペースでエンハンスされた.2010年7月時点でASP/V26が提供されている.ここでは初版(E92)の機能を概説し,以降2000年までの主要なエンハンス項目について触れることとする.

 1992年10月に発表されたASPは,発表当時,次の諸機能がその特徴として挙げられていた.

(1) TCP/IPをベースとして,各種PC/WSとの連携などオープンシステム対応を強化
  • ISO標準のRDA(Remote Database Access)に準拠した「RDA-SV/TCP」の提供
    PC上のISVソフトウェアからFUJITSU K6000シリーズ上のRDB/6000が管理するリレーショナルデータベースのアクセスを可能にした.
  • 仮想端末機能「TELNET」のフルスクリーンモードをサポート
    LAN (TCP/IP手順)で接続されたPC/WS(ワークステーション)をFUJITSU K6000シリーズのディスプレイ端末として利用可能にした.
  • PC-LANサーバ機能「LANPARTNER」の提供
    PC上の LAN マネージャ(マイクロソフト製)と連携するための機能.名前付きパイプ機能を活かした応用プログラム間会話や,ファイル共用,プリンタ共用を可能にした.
  • MS-DOSやUNIXで標準的な「多階層ファイルシステム」のサポート
  • FAXのサポート
  • パソコンデータの編集メディアに対するJOIN機能の充実
    PCの各種データ形式を取り込むJOIN機能として,従来からあった「JOIN MS-DOS」に加え,新たに「JOIN 一太郎」が提供された.なお,次のE93にて,「JOIN 1-2-3」と「JOIN EXCEL」が加えられた.
  • パソコンセンタ通信機能「PCSP」の強化
    PCSPはパソコン通信をサービスするPersonal Computer Communication Service Programの略称.

(2) 先進ソフトウェアによる使いやすさの向上
  • OS基本性能の向上
    ファイルオープンやプログラムローディングの高速化によるシステム立ち上げ時間の短縮,大量データのソート(並び替え)性能の向上
  • 「K-Windows」の画面操作のビジュアル性を高め,マルチウィンドウ機能を標準装備
    K-Windowsは,CSP/FXにて提供されていたワークステーションに対するリモートウィンドウ機能.
  • 国際標準「SQL」を標準装備したリレーショナルデータベース管理ソフトウェア「RDB/6000」の提供
    RDB/6000は後にASP/V13からSymfoWARE6000 (後にSymfoware6000と表記変更)へと改称された.
  • データベース転送機能「DB-EXPRESS」の提供
    富士通のメインフレームであるFUJITSU MシリーズのDB-EXPRESSと連携して,Mシリーズのデータベースを抽出してFUJITSU K6000シリーズ上のRDB/6000にて利用可能とした.
  • プログラム開発の保守性を向上させる世代管理システム「GMS (Generation Management Service)」の提供

 以上は,発表された当時のASPに加えられた特徴的な機能である.以下, 2000年までに加えられた主要なエンハンス項目についておおむね時系列に概観する.

  • FUJITSU K6000シリーズは1993年10月の強化で富士通独自の64ビットRISCプロセッサを採用した.ASPも新プロセッサをサポートした.
  • 連携するPCのOSとしてNetwareやOS/2をサポート
  • 1997年5月に発表されたFUJITSU GRANPOWER6000シリーズにはインテル社のプロセッサが採用され,ASPもそれに合わせて改造された.その初版がASP./V10であり,以降ASP/Vnnとの版数名が付けられるようになった.
  • 開発環境の一環として住所辞書を提供
  • 富士通のシステム管理製品であるMpWalker(後のSystemwalker)のエージェント機能を提供
  • ネットワークコンピューティングへの対応として、Webサーバの搭載やブラウザでのエミュレータ(Webjet)機能を提供
  • オフコンの帳票を電子化するLISTVIEW(後のSystemwalker ListWORKS)やPDFへの変換機能を提供
  • 同社製の全サーバに共通のJava開発・実行環境の提供
  • WWW(World Wide Web)セントリックなシステムを構築できる機能の提供

  
情報提供CD-ROM媒体:ASP情報ライブラリ