【日本電気】 ACOSシステム410,430,610,630,910,930

ACOSシステム410,430,610,630,910,930(以下それぞれS410,S430,S610,S630,S910,S930と表示)は情報システムのネットワーク化に対応した小型から大型までをカバーする汎用コンピュータである.

1974年に発表したACOSシリーズ以降,日本電気のコンピュータ開発は自主技術を中心に行われるようになり,半導体技術の進歩とともに,コンピュータの高密度化,高性能化を進めた.

小型機では,1983年4月に,ACOSシステム250の後継機としてS410を発表.S410は,日本電気で初めてプロセッサにCMOS技術を採用することで小型化を実現した.

S410はまた,オフィス事務支援のソフトを備えることで,データ処理はもとより,意思決定や事務処理,他部門とのコミュニケーションといった統合オフィスオートメーションシステム構築に適したコンピュータであった.

中型機では1984年2月,ACOSシステム350の後継機としてS430を発表した.S430は,主記憶装置に256キロビットDRAM,中央処理装置に16,000ゲートCMOSカスタムLSIや,4,400ゲートCMOSゲートアレイなどのCMOS技術を採用した高密度論理LSIを搭載し,機能の拡大を行うとともに,小型化,高速化,低電力化,高信頼度化を実現した.

また,S430はS350のアーキテクチャを継承するとともにページング機能を追加,さらに入出力チャンネル動作への動的アドレス変換(DAT)機能採用などにより,データ処理,オフィスオートメーションやCAD,研究開発など広範な分野への適用が可能であった.

大型機では,1985年4月にACOSシステム450,550の後継機としてのS610,S630,さらに1987年1月に上位機のACOSシステム650,750,850の後継機として,S830,S910,S930を発表.

S610,S630は,ゲート当たり遅延時間250ピコ秒でチップ当たり300ゲートのバイポーラ論理LSI,ゲート当たり遅延時間350ピコ秒,チップ当たり2,000ゲートバイポーラ論理LSI,アクセス時間10ナノ秒の4キロビットバイポーラRAM,256キロビットDRAMなど,超大型機ACOSシステム1500シリーズの技術を採用することで,筐体の床面積を1平方メートル以下とコンパクトでありながら高性能を実現.また,高速科学演算プロセッサ(HSP)および統合アレイプロセッサ(IAP)を付加することで高度な科学技術計算能力が可能となっている.

S830,S910,S930は,ゲート当たり遅延時間100ピコ秒でチップ当たり1,000ゲートの論理LSI,ゲート当たり遅延時間170ピコ秒,チップ当たり4,000ゲート論理LSI,アクセス時間10ナノ秒の4キロビットバイポーラRAM,1メガビットDRAMなど,超大型機ACOSシステム2000シリーズの技術を採用している.また,高度なパイプライン技法,高精度な分岐予測方式など中央処理装置を高速化する技術の採用により,価格性能比を向上した.

さらに,国際的に標準化が進められていたOSIに対応したネットワーク機能を採用し,CCITTのMHSに準拠した電子メールシステムやISOのFTAMに対応できるリモートファイルシステムなどのソフトウェアを備えているため異機種間接続を容易に構築できた.

ACOSシステム410〜930の諸元
  S410 S430 S610 S630 S910 S830 S930
発表時期 1983年4月 1984年2月 1985年4月 1987年1月
OS ACOS-2 ACOS-4 ACOS-6
演算処理装置台数 1台 1台 最大2台 1台 最大4台 最大4台 最大4台
最大主記憶容量 6MB 16MB 40MB 32MB 256MB 128MB 256MB
最大チャンネル本数 6(固定) 12本 24本 24本 96本 96本 96本
最大データ転送速度 10MB/秒(固定) 20MB/秒 30MB/秒 30MB/秒 192MB/秒 192MB/秒 192MB/秒
CPU素子 CMOS バイポーラ空冷 バイポーラ水冷
メモリ素子 64KビットDRAM 256KビットDRAM 1MビットDRAM

ACOSシステム410ACOSシステム430ACOSシステム610
ACOSシステム630ACOSシステム830ACOSシステム910
  
ACOSシステム930