【富士通】 大型FACOM M-100シリーズ

富士通の汎用機FACOM Mシリーズの初期の大型機シリーズ.1974年11月に発表された.本シリーズは,超大型機FACOM M-190,大型機FACOM M-180IIおよびFACOM M-160の3機種から構成され,以下の特長を有している.

(1)国際標準となっていたIBM S/370を基本アーキテクチャに採用
(2)全面LSI化により優れた価格性能比と高信頼性・省電力/省スペースを実現
1チップ当たり最大100ゲート,チップ内のゲート当たりの遅延時間が平均700psという実用レベルでは世界最高水準のLSIを全面的に採用することにより,飛躍的に処理速度を向上させるとともに,信頼性の向上と省電力/省スペースを実現.
(3)高速アドレス変換機構の搭載
M-100シリーズがサポートする16メガバイトの仮想空間の実アドレス変換を高速にするためのハードウェア機構として,TLB(Translation Lookaside Buffer)を装備.また,大型向けOSがサポートする多重仮想記憶空間を高速に扱うために,STO(Segment Table Origin)スタックを装備.(図-1参照)
(4)チャネルDAT(Dynamic Address Translation)機構の搭載
チャネルDAT機構により,入出力装置からのデータは仮想記憶空間に直接読み書きできるため,同機構がない場合に比べ,システム性能が5〜20%改善した.特にオンラインシステムに対する効果が大きい.
(5)サービスプロセッサ(SVP)の採用
ハードウェアによる自動回復・自動訂正機能に加え,CPUとは独立したSVPを搭載することで,RAS(Reliability 信頼性,Availability 可用性,Serviceability 保守性)機能の充実が図られた.SVPの具体的な機能は次のとおり.
  • OSのためのコンソール機能
  • 操作パネル機能: FACOM M100シリーズの本体パネルにはランプやスイッチが殆どなく,SVPに繋がるディスプレイ装置を用いて操作が行われた.
  • 保守パネル機能: 保守員(CE)はSVPに収められた運用状態情報やテストツールを利用.
  • リモート保守機能: SVPを通信回線で保守センターに接続することで可能.
(6)オンラインデータベース用のソフトウェアを用意
オンラインネットワーク機能と高度なデータベース機能を有機的に結合した,AIM (Advanced Information Manager) と呼ばれる総合的オンラインデータベース管理ソフトウェアを用意.

図-1 TLBとSTOスタック

図-1 TLBとSTOスタック

大型FACOM M-100シリーズ諸元
機種名 M-160 M-180II M-190
発表時期 1975年5月 1975年9月 1974年11月
位置付け 大型機 超大型機
CPU 1 1,2
主要素子 100ゲ−ト/チップ,遅延時間700ps/ゲート ECL LSI
バッファストレージ - 8,16KB
バイポーラIC
16KB
バイポーラIC
アドレス変換機構 TLB TLBとSTOスタック
記憶装置 記憶素子 N-MOS ICメモリ (4Kbit/チップ)
サイクルタイム 360ns/8B 350ns/8B 480ns/32B
記憶容量 256KB〜4MB 単一CPUモデル:
512KB〜4MB
マルチCPUモデル:
1〜8MB
1〜16MB
チェック機能 ECC (1bitエラー自動訂正,2bitエラー検出)
最大搭載チャネル数 8 12/CPU 16/CPU
備考 改良機としてM-160AD,M-160Fがある 改良機としてM-180IIADがある 後継機としてM-200がある

(注) 上記の諸元は発表時のもので,その後の改良で変更されている場合がある.


 
FACOM M-160/M-180II/M-190用LSIチップ当り100ゲートの回路を有するECL LSIFACOM M-160/M-180II/M-190用MCCLSIを最大42個搭載できるMulti Chip Carrier