FACOM 6450は,50MBのカートリッジテープを第2次記憶階層として採用した,富士通の大容量記憶システム(MSS:Mass Storage System)であり,1980年に完成した.情報化社会の高度化に伴い,大量のデータを直接アクセスでき,しかも一元的に管理できる記憶システムが強く望まれていた.本装置は,この要求に応える目的で,磁気テープの自動倉庫と仮想ディスクの概念を導入して開発され,データ処理の効率化と省力化を実現した.
本装置の概要は以下の通り.
- (1) 1巻当り50MBの容量を持つデータカートリッジ(注)を706〜9,440個格納でき,35〜472ギガバイトのデータを保管できる.これは,FACOM 478用ディスクパック(100MB)の350〜4,720本に相当.
- (2) このカートリッジは必要に応じてロボットにより保管庫から記録再生機構部に運搬されてデータ処理が行なわれる.
- (3) カートリッジ2巻を100MBの1ボリュームと扱い仮想的にFACOM 478用ディスクパックと等価に制御される.
- (4) CPUから要求されたデータが実際の磁気ディスク上にあるときはそのままCPUへ,磁気ディスク上にないときは必要なデータをカートリッジから読み出し,一度磁気ディスク上に移し変えた後でCPUへ転送する.
- (5) この制御はホストのオペレーティングシステムとMSSハードウェアにより行なわれ,人手の介入を必要としない.
- (6) MSSは,最大4台のCPUから同時に使用できるため,大量のデータ処理には最適である.また,構成装置の二重化により信頼性の向上にも配慮されているため人手介入のない一貫したオンラインデータベースの構築に有用である.
(注)幅約7cm,長さ20mの磁気テープを直径約5cm,長さ約9cmの円筒状のケースに格納したもの.
1984年には,本装置の後継機としてFACOM 6460カートリッジライブラリ装置が完成した.FACOM 6460では,新開発の150メガバイトの記憶容量を持つ専用のデータカットリッジを採用し,経済性,導入と運用の容易性および高信頼性を狙って開発された.FACOM 6460ではバックアップ機能に特化し,仮想磁気ディスク機構は提供されなかった.FACOM 6450および6460では,専用のデータカートリッジを使用したが,後にテープ装置で使用するカートリッジテープ媒体を採用したライブラリ装置へと発展した.
機種名 |
FACOM 6450 大容量記憶システム |
FACOM 6460カートリッジ ライブラリシステム |
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完成時期 | 1980年 | 1984年 |
カートリッジの種類 | 専用データカートリッジ(円筒形のケース) | 専用データカートリッジ(砲弾形のケース) |
カートリッジの記憶容量 | 50 メガバイト | 150 メガバイト |
最大収容カートリッジ数 | 706 - 4,720 (*1) | 314 - 1,256 (*1) |
最大記憶容量 | 35 - 236 GB (*1) | 47 - 188 GB (*1) |
データカートリッジのデータ転送速度 |
瞬間最大:874KB/秒 実効:371KB/秒 |
瞬間最大:1.75 MB/秒 |
平均アクセス時間 | 8 - 13秒 | 3秒 |
ロード/アンロード時間 | 各5秒以下 | 各5秒 |
接続チャネル数 |
最大4チャネル(MXC) (*2) |
最大8チャネル(BMC) (制御装置当り最大4チャネル) |
備考 |
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*1:装置の構成により最大数が異なる.
*2:CPUとのデータ転送は,ステージング用ディスクパック装置が接続されるステージングディスク制御装置とチャネル(BMC)間で実行される.