沖電気は,日本語ワードプロセッサの小型化,低価格化を図ったかな漢字変換入力方式を採用したLettermate85を1983年に発表した.さらに,グラフ機能・計算機能などの高機能化を実現し,表示・印刷処理の高速化,通信機能(オプション)を備えた.機構・構造面では,CRTのチルト(首振り)機構,キーボードのスロープスカルプチャ構造など,人間工学的な使いやすさにも配慮したものであった.
主な特徴は以下の通りである.
- (1) 2ウェイ入力
- 入力方式は,JIS配列キーボードによるかな漢字変換入力方式と全文字タブレットによる漢字直接入力方式の2種類があり,利用者の慣れた入力方式を選択することができる.さらに,かな漢字変換入力方式とローマ字漢字変換入力も使用可能であった.
- (2) 表示の迅速性
- ディスプレイ表示文字は41字×25行を表示可能であり,表示処理の高速化のためにキャラクタリフレッシュ方式を採用し,編集結果の表示あるいはスクロールの高速化を実現した.
- (3) 大容量ファイル
- 文書記憶装置として5インチ両面倍密度FDDを2台装備し,媒体1枚あたりA4換算で約100ページの文書を格納でき,さらに,ファイルごとにパスワードを設定するなどのセキュリティ機能も提供していた.
- (4) 高品位印字出力ならびに多彩な印刷機能
- 印字文字は24×24ドット構成明朝体文字を採用,印字速度は40字/秒と高速であり,さらに,文字編集中に別の文書ファイルを出力する並行印刷機能を提供した.また,縦書き,横書き,袋綴じ印刷,段組み印刷,差込み印刷なども実現した.
- (5) 人間工学的使いやすさ
- JIS配列キーボードはスロープスカルプチャ構造により,キーボード全体の傾斜を2段階に切り替えることができ,利用者の疲労感の軽減に配慮したものであった.またCRTのチルト(首振り)機構も実現した.
Lettermate85 | |||
---|---|---|---|
入力 | 入力方式 |
かな漢字変換入力(JIS配列キーボード) または漢字直接入力(全文字配列タブレット) |
|
使用文字種 | 約7,300文字 | ||
辞書容量 | 約5万語 | ||
表示 | 使用モニタ | 12inchグリーンCRT | |
解像度 | 水平738×垂直500ドット | ||
表示文字数 | 41字×25行 | ||
文字構成 | 16×16ドット(ゴシック体) | ||
ファイル | 使用ユニット | 5inch倍密度トラックFDD×2台 | |
媒体容量 | 約600KB/媒体 | ||
文書容量 | A4換算 約100ページ/媒体 | ||
印刷 | 印字方式 | ワイヤドットインパクト方式(複写枚数3枚まで) | |
印字速度 | 40字/s | ||
文字構成 | 24×24ドット(明朝体) | ||
文字サイズ | 約3.45×3.45mm | ||
1行最大印字数 | 79字/行 | 48字/行 | |
用紙サイズ | B5,A4,B4 最大15inch | B5,A4 最大10inch | |
通信機能 | RS232C(NCU) |