Cenju-3は1993年に発表されたNECとしては初めてのマイクロプロセッサ(VR4400)を多数結合した,分散メモリ型並列計算機システムである.NECでは,1985年頃から,社内の回路シミュレーション専用マシンとして,マイクロプロセッサを多数結合した並列処理マシンCenju並びにCenju-IIの研究開発を行っていた.これらのマシンで,回路シミュレーション以外に,有限要素法やプラズマシミュレーションの並列化に成功し,種々の応用に適用できると判断された.その結果,1993年に製品化されたのがCenju-3 である.Cenju-3では,Cenju/Cenju-IIの経験を元に,最大接続可能プロセッサ数を256台とした.ネットワークはこの範囲において,高性能な通信及びコンパクトな実装を実現するために,多段接続網とした.Cenju-3ではVR4400が処理プロセッサに採用された.VR4400(75Mhz)は,150MIPS,50MFLOPSの処理能力を有する.Cenju-3(64PEシステム)のハードウェア構成を図1に示す.
図1 Cenju-3(64PE)のハードウェア構成256PEシステムの最大性能は38.4GIPS(150MIPSX256),12.8GFLOPS(50MFLOPSX256),総メモリサイズは16GB(64MB*256)である.Cenju-3では並列化のボトルネックとなる通信速度の向上を図るために,プロセッサ-ネットワークインタフェースとして,専用のハードウェアが開発された.このハードウェアでは,複数の通信手段(メッセージ2種・DMA),データの自動分割,優先順位付きキュー,種々の割り込みなどを実現しており,ソフトウェアオーバヘッドを軽減している.
Cenju-3では並列ライブラリとして,当初独自の並列ライブラリ,Paralib/CJが提供されていた.1995年頃に並列ライブラリとして,世の中の標準であるMPI(Message Passing Interface)がNECの欧州C&C研究所で実装され,その結果プログラムのポータビリティが向上した.また,Cenju-3は国内のサイトだけでなく,欧州等でも主に並列プログラミングの研究という形で利用された.また,国内では情報処理学会の主催するJSPP並列プログラミングコンテストで,1994年から1997年頃まで,コンテスト用プラットフォームの内の一つとして提供された.