【ソニー】SMC-70システム

マイクロコンピュータSMC-70システムは,1982年10月にソニーによりまず米国で,16色を表示できるグラフィック機能を特長とし,ビジネス用として導入された.その後,同年12月1日に,国内でも発売が開始された.国内向けのシステムでは,漢字メモリの追加により日本語の表示も可能であった.なお,同システムはソニーで開発された3.5インチマイクロフロッピーディスクをパソコンとして最初に採用したシステムである.

SMC-70本体は,キーボードと一体となった制御部と電源部から成っている.この本体に周辺装置など各種のオプションを接続することで,ホビー用から,ワープロ,作表システムをはじめとする業務用まで各種のシステムを構築できた.そのオプションとしては,3.5インチマイクロフロッピーディスクドライブなどの外部記憶装置,プリンタ,表示装置のほかに機能拡張用の6種のプラグイン式の拡張ユニットなどが準備されていた.また,ソフトウェアとしては,SMC-70本体に収められているSONY BASICのほかにオプションとしてCP/M,Sony Disk BASICがあった.

このような構成のSMC-70システムは下記のような特長を持っている:

1. 多彩な表示機能
画面は,キャラクタ表示面,グラフィック表示面,およびボーダーエリアの3画面からなり,個別に制御できることを特長としている.キャラクタ表示面は,内蔵ROMの最大256種の文字や記号に加え,オプションの漢字メモリを接続することでJIS第一水準の約3,000の漢字を使用できた.グラフィック表示面は,4つのモードのうち,160×100ドット4面,あるいは320×200ドットのモードでは16色の表示を可能としている.さらに,このグラフィック表示面にキャラクタ表示面を重ねることや,表示面を瞬時に切り替えることが可能であった.
2. 8ビットCPUから16ビットCPUなど,諸元の拡張が可能
SMC-70本体のCPUには4.028MHzクロックのZ-80Aを採用し,ソニーが開発したSONY・BASICを搭載している.メモリとしてはROMのほかに64キロバイトのRAMが標準装備されているが,バンクRAM(オプション)を接続することで256 キロバイトまで拡張することができた.このSMC-70本体には,CPU-8086を使用した16ビットCPUユニット SMC-7086(オプション)の接続が可能であった.これを接続することにより,メモリは256キロバイトになり,さらにRAMエクスパンションカード(オプション)を使えば768キロバイトまで拡張できた.
SMC-70システムではファイル管理などのソフトウェアとしてCP/Mを使うことができた.マイクロフロッピーディスクを使用する場合にはこのCP/M上で動作するSony Disc BASICと容量が256キロバイトのキャッシュディスクユニットとを組み合わせることでファイル処理の速度は、ランダムアクセスを多用した場合、フロッピーディスク単体での処理速度の200〜300倍に上げることができた.また,16ビットCPU使用時にはMS-DOSやコンカレントCP/Mなどが使えるように設計されていた.
3. コンパクトで操作性のよい構造
4層基板,ディスプレイ制御用LSIを含め独自に開発した3個のカスタムLSI,あるいは3.5インチマイクロフロッピーディスクなどの採用により,SMC-70本体上にオプションのマイクロフロッピーディスクユニットを搭載しても,幅366×高さ108×奥行444mmに収まっている.高さがSMC-70本体の高さ90mmからわずか18mmしか高くならないのは制御部のカバーを取り外して代わりにマイクロフロッピーディスクを装着する構造になっていることによる.また,6種のプラグイン式の拡張ユニットは,SMC-70本体から電源部を後方に引き出し,拡張ユニットを制御部と電源部との間に挟みこむという独自の方式を採用することで機能の拡張を容易にしている.キーボードは,キーの列ごとに段差をつけ,各キーの表面は指先に沿うように凹型にしたシリンドリカルステップスカルプチャー構造を採用し,またキー配列もIBMセレクトリックタイプライタと同じにすることでタイプライタの感覚でキーを操作できるようになっている.
SMC-70本体の諸元
項目 適用
CPU Z-80A(クロック4.028MHz)
メモリ ROM:48KB(SONY BASICおよびシステムモニタ用)
RAM:64KB(ユーザ用)
         32KB(グラフィック表示用)
         6KB(キャラクタ表示用)
表示能力 キャラクタ表示 8×8ドットマトリックス/キャラクタ
80字×25行,40字×25行×2ページ
文字種類 最大256種類
フォアグラウンドカラー 8色
バックグラウンドカラー 4種類
グラフィック表示 160×100ドット 4面((16色)
640×200ドット(4色)
320×200ドット(16色)
640×400ドット(B/W)
ボーダーエリア 16色
キーボード 専用マイクロプロセッサによるキーボードエンコーダ
使用キー 総数:73
外部との
インタフェース
ビデオ出力 アナログRGB出力
B/Wコンポジットビデオ出力
プリンタ パラレルインタフェース(セントロニクス社仕様準拠)
カセット 1200ボー
回線 RS-232Cインタフェース:
75〜19,200ボー切り替え可能
内蔵ソフトウェア システムモニタ,SONY BASIC
外形寸法(mm) (幅)366×(高さ)90×(奥行)444
重量(kg) 4.8
使用電源 AC100V,50/60Hz

  
SMC-70