【東京大学】重力計算専用機GRAPE

GRAPEの名称はGRAvity PipEによる.銀河のような多数(O(N))の質点が引力を及ぼし合っているシステムでは,万有引力の計算はO(N2)の膨大な計算が必要になる.この重力計算だけに専念する計算機を作るプロジェクトが1989年4月に始まり,GRAPE-1が同年9月に完成した.ホスト計算機から各恒星の位置を送ると,重力計算を行い,各恒星にかかる合成した力をホストに返す.ホスト計算機はその情報から各恒星の位置を更新する.GRAPE-1と1990年4月に完成したGRAPE-2は市販LSIを100個前後使った1ボードシステムだが,1991年に完成したGRAPE-3ではGRAPE-1ボード相当の回路を1チップの集積したカスタムLSIを開発し,48個並列動作させて14.4 ギガFLOPSを実現した.

1992年に開発を始めて1995年夏に完成したGRAPE-4では,粒子の加速度の時間積分と重力を計算するHarpとIndividual時間ステップを高速に計算するPrometheusの2つのLSIを開発した.Harpチップ48個とPrometheusチップ1個を搭載したプロセッサボード36枚を4枚のコントロールボード経由でホスト計算機に接続し,1.08 テラFLOPSを達成した.この後継のGRAPE-6の開発は1997年に始まり,2001年度に完成,2048チップで64 テラFLOPSを実現した.重力以外の応用として分子動力学シミュレーションに専用化したMD-GRAPEシステムの開発も進められた.

最初のMD-GRAPEは東大で開発したが1995年から理研でMDGRAPE-2の開発が始まり,これは2002年に完成して75 テラFLOPSを達成した.GRAPE-6,MDGRAPE-2共に,さらに後継の開発が続いている.

(情報処理学会歴史特別委員会編「日本のコンピュータ史」(2010年,オーム社発行) pp.190-200より編集)


  
GRAPE