1982年に第五世代コンピュータプロジェクトが始まり,東大工学部元岡・田中研でも並列論理型言語とその処理機械の研究を始めた.数台の推論処理系を試作した後,1986年にGHC(Guarded Horn Clauses)の簡易版Flengの処理用専用マシンPIE(Parallel Inference Engine)の開発を開始した.ハードウェアは1993年に完成,1994年に稼働開始した.
PIE 64は64台のInference Unit(IU)が2つの結合網で接続されている.結合網は8ビット64ポートのガンマ網で,IUが仕事量を提示し,最小負荷のIUへ仕事が転送されるようになっている.IUは論理型言語処理用のUnification,Reduceを高速実行するUNIREDを備えている.各IUのローカルメモリは他のIUから結合網経由でアクセス可能である.またIUにはNetwork Interface Processor(NIP)も搭載された.
また,PIEにはシステムの稼働状況とプログラムの実行並列度とを適応的に最適化する機能を備えたOSと,バグのありかを論理的に追えるデバッガ,HyperDEBUがあったことも特記しておく.1筐体が国立科学博物館に保存されている.
(情報処理学会歴史特別委員会編「日本のコンピュータ史」(2010年,オーム社発行) pp.198-199より編集)